「幸いいまはほぼ全室埋まっていますが、アパートのある実家は田舎で、最寄り駅から車でも10分はかかる。この先、人口も減っていけば空室が出てきます。本当の『負動産』になる前に何とか処分したいけど、どこに相談すれば的確なアドバイスを受けられるか本当に悩みます」

 離れて暮らす親の介護も頭の痛い問題だ。総務省の調査では、介護を理由に仕事を辞める人は年間10万人にのぼる。

「母の介護が家族では面倒見きれなくなってしまったので施設に預けたが、施設でも手を焼くほどの症状の重さで施設側から『ウチではこれ以上支援することができない』と三行半をつきつけられた」(47歳、男性)

 30年以上にわたり引きこもっている弟(50)が原因で「生前整理」できずに悩んでいる人もいた。内閣府によると、引きこもりは全国に54万人。特に中高年で深刻化している。

「父も80歳を超え、実家を処分しホームやマンションに移ってもらい生前整理をしたいのですが、弟が実家の家財道具すべてを自分の管理・支配下に置かなければ気が済まないためそれを許しません。家財道具を片付けようとすると激高し暴れまわり、掃除はもちろん『整理』などできる状態ではありません」(53歳、女性)

 戦前は「嫡出長男」が原則で「一番上の子」がすべての財産を継いでいたが、戦後の新しい民法の下で相続のルールは大きく変わった。子であれば生まれた順序や男女、婚姻の有無、嫡出子か非嫡出子かを問わず、法定相続分はすべて平等となった。とはいえ、親の世代は古い制度にとらわれていることも多く、不平等からトラブルが起きやすい。

 加えて、核家族が増え、家を守るという意識やきょうだい間の日常的なつながりが弱くなり、それぞれの権利意識が強くなったことで対立するケースが増えるようになった。

 争いの背後には、血縁関係のない家族がいることもある。

 都内の会社員の女性(41)は、兄嫁(48)と相続を巡りトラブルに発展しそうで怖いと打ち明ける。兄嫁は兄(49)と関西地方の実家近くに住んでいる。先日、女性がその実家に帰った際、母(80)から耳を疑う話を聞かされたのだ。

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