「『スノーボードをやっているから、スケートボードがうまい』なんてことは一切ない。例えて言うと、野球とバスケを両立するのと一緒。これからめざす子たちと変わらない気持ちで、スケートボードっていうものを考えているつもり。ゼロから100まで積み重ねないといけない。『やりたい』って言ってすぐやれるほど簡単じゃないことは、五輪を2回経験した僕が一番感じている」
雪山を転戦するスノボと、夏場のコンクリートで戦うスケボー。二刀流を追った結果、スノボの競技力が落ちてしまう危険性も小さくはない。
「工夫して、考えないといけない。両方が中途半端になることも覚悟しながらやっていかないと。時間を無駄にできないっていうのが、一番強いですね」
スノボ界では五輪以上に重視されることもある世界最高峰のプロ大会「ウィンターXゲームズ」を制覇した経験もある。雪上で積み上げた実績と名声は、すでに超一流に違いない。なのに、リスクを冒してまで、なぜスケボーに手を出す必要があるのか──。そんな問いに対する平野の答えは明快だった。
「誰も挑戦していないことにこだわり続けたい」
中学3年で挑んだ2014年ソチ五輪のスノボ・ハーフパイプで、銀メダルを獲得。15歳での表彰台は、日本の冬季五輪の最年少記録を更新する快挙だった。昨季は、単発でも世界で数人しかできないスノボの大技「ダブルコーク1440」(縦2回転、横4回転)を世界で初めて連続で成功させてみせた。
「自分にしかできないこと」を実際に形にすることで前に進んできた確かな自負が、そこにはある。失敗して周りに笑われたって、そんなことは大した問題ではない。
「誰もいない道を行く。トップであり続けたいなら、そういう考え方をしていかないと。カッコ良いとか悪いっていうものへのこだわりは、自分はもう捨てたつもりなので」
視線の先に東京五輪が映ってはいるが、決してそれが全てではないとも語る。
「五輪だけに依存するつもりはないし、そこに行かなきゃいけないっていうつもりは一切ありません。大事なのは今、ゼロから始める人間が『ここからどう近道しないといけないか』ということ。違う角度、目線で、人に無いものを僕は感じていかないと。大きな壁を目の前にした時、どこまでやれるか。挑戦することへの気持ちの方が強い」