『14歳、明日の時間割』は中学校を舞台に、時間割に見立てた7編からなる連作短編小説集だ。現役中学生が生き生きと描く、待望の2作目。著者の鈴木るりかさんに、同著に込めた思いを聞いた。
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華々しいデビューを飾るほど言われる。「真価が問われるのは2作目だ」と。
昨年、『さよなら、田中さん』で小説家デビューを果たした鈴木るりかさん(15)も例外ではないだろう。中学2年で書いたその本は10万部のベストセラーになった。
「1作目よりも、よりいいものを書かないといけないというプレッシャーはありました。でも、『次作を期待しています』と言われると、頑張ろうという気持ちになります」
どうにか、なる──。太宰治の短編「葉」の最後の一文を何度も唱えながら書き上げた2作目が『14歳、明日の時間割』だ。中学校を舞台に、時間割に見立てた7編からなる連作短編集。あるクラスの少年少女が入れ代わり立ち代わり主人公となって、今を生きる中学生の悩みや孤独、友情などを生き生きと描く。
最初に書いたのは「体育」だ。運動神経ゼロの星野茜があることを願い、一大決心をしてマラソン大会に挑む。以前から「体育が苦手な女子を主人公にした小説を書きたいという構想はあった」が、直接のきっかけは、
「スポーツ庁の『運動、スポーツ嫌いの中学生を半減させる』というニュースを聞いた時にひらめきました」
運動音痴の茜はある日、信じられない思いでそのニュースを聞き、思う。
<好きにさせる、のではなく、半分に減らすのだという。私たちは、減らされる対象なのか。駆逐されるべき存在なのか>
彼女だけでなく、母から言葉で虐待を受けている少女や社会に抹殺されて引きこもりになった青年、友達のいない少女などを通して、生きにくい社会を軽妙な文章で鋭く見つめる。かつて子どもだった大人たちも、彼らの中に自分を重ね合わせるに違いない。
1歳半から絵本に親しみ、図書館に通い続け、文豪たちの小説を血肉にしてきた。今作も笑いも涙もたっぷり絶妙なバランスで読ませる。だが、るりかさんはプロットを書かない。日々新聞を読みニュースを見て社会ネタをインプットするが、すべて頭の中だ。