そして、テレビ業界における東大生ブームに乗り、2016年に「東大王」がスタート。もともと素人だったクイズ王のタレント化や、新たなクイズ王の育成に成功し、わかりやすいブランドを身にまとったクイズ王集団は、メンバーを入れ替えながら活躍を続けています。
ここまで、テレビに焦点を当てるかたちでクイズの歴史を追ってきましたが、最後に他のフィールドについても触れておきます。
2000年代にはアーケードゲーム「クイズマジックアカデミー」と「Answer×Answer」がスタートし、ゲームセンターで他のプレーヤーとオンライン対戦することが可能に。2015年にリリースされたスマートフォン向けアプリ「みんなで早押しクイズ(みんはや)」も大人気です。2010年代に連載された漫画「ナナマル サンバツ」は単行本20巻まで続き、アニメ化や舞台化も実現。2014年に創刊された雑誌「QUIZ JAPAN」は、不定期刊行ながら徐々に厚みを増し、「vol.15」に到達しました。
2016年にはウェブメディア「QuizKnock」がスタート。ウェブ上で公開されているクイズやYouTubeの硬軟織り交ぜた動画は、クイズの入り口を大きく広げて多くのファンを獲得しました。2023年にはYouTubeのチャンネル登録者数が200万人を突破し、クイズの世界にとどまらない人気コンテンツに成長しています。
また、かつては入手経路が限られていたクイズの問題集や早押し機が、誰でも簡単に購入できるようになったことも、クイズの裾野を広げることに寄与したと言えるでしょう。そして、まだ局地的ではありますが、クイズが楽しめるスペースやバーも誕生しており、クイズをやりたいときに気軽に足を運べる場が、今後さらに増えていくと思われます。
今や誰もが簡単にクイズに触れることができ、解答者だけでなく企画者・出題者としても楽しめる時代になりました。クイズの進化はとどまることを知らず、さらなる発展が期待されますが、未来に目を向けると最も注目されるのがAIとの関わり方でしょうか。
AIはいかなる問題群においてもクイズ王を凌駕(りょうが)できるのか。プロのクイズ作家と同じ品質の問題をそろえることができるのか。クイズの世界におけるシンギュラリティはいつか訪れるのか。興味は尽きることがありません。
(クイズ作家・校正者 田中健一/生活・文化編集部)