病に苦しみながらも、働くことをあきらめなかった女性たちがいる。転職を繰り返し、人生の酸いも甘いもかみわけてきた教訓とは?
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外資系の金融企業を渡り歩いてきた東京都在住の40代の女性は、これまでに12回の転職経験がある。当初は年収も役職も転職する度に上昇していく「キャリアアップの転職」だった。
だが、5社目で「外資の洗礼」を受けた。入社直後から上長直属の部署に配置され、古株の女性たちの嫉妬を買った。小さなミスをしただけで総攻撃を食らった。わざと聞こえる声で毎日のように悪口を言われた。
「外資系は、人の回転率が高い。『ここに合わない』と判断した新入りに集団で圧力をかけやすいのかなと思う。次がいくらでも見つかるでしょうと。私は言語障害とうつを発症し、会社に行くと思うだけで吐き気をもよおすようになりました」
心療内科に通い始め、退職した。以降、1~3年おきに「逃げる転職」を繰り返した。
うつのことは転職活動の面接で隠し通している。けれども一度だけ、人事担当者から、「君は挙動がおかしい。目の焦点が合っていない」と指摘され、採用が撤回されたこともあった。
うつの症状が重かった頃に就職した会社では、入社直後に希死念慮が強くなり、試用期間中に辞めたこともある。
10社目はマネジャー(一般企業でいう課長クラス)でも派遣の仕事でもいいと割り切って入社。給料は以前の4分の1に下がったものの、正社員と同等の仕事を任され、1年もしないうちに正社員に格上げされた。自信を取り戻し、うつ症状も落ち着いた。
今働いている大手企業は以前から憧れていた会社でもあり、数カ月にわたる転職活動を経て面接のチャンスが巡ってきた。
「正直、40代に突入してからは、書類審査の通りが悪くなりました。転職回数も多いし。でも、面接は数をこなしていて、相当スキルアップしています。じっと待ってひとたび声がかかれば、絶対に通る自信があります」
今は、職場の風通しもいい。