「原因や発症するきっかけはよくわかっていません。セロトニンなどの脳内伝達物質が、正常に働かなくなったためではないかと考えられています。最も大切なのは、まずきちんと診断を受けることです」
てんかんや心疾患など、パニック障害とよく似た症状が現れる別の病気の場合もあるからだ。パニック障害の人の中には適切な治療を受ければ十分改善が期待できるのに、受診していない人も少なくないという。
パニック障害の主な治療は、薬物療法と認知行動療法だ。
薬物療法で使用するのは、抗うつ薬と抗不安薬。抗うつ薬で不安をやわらげ、パニック発作が起きた時には抗不安薬を服用すると、10~15分ほどで恐怖感が薄らいでいく。前出の女性も服用を始めると発作の回数が減り、発作への不安もおさまっていった。1年ほどで発作が出なくなり投薬を中止。以来、発作は起きていないという。
認知行動療法は発作に対する考え方を変え、対応力を高めていく精神療法だ。たとえば認知行動療法の一つの「暴露療法」は、発作が起こるのではと不安になるような場所にあえて出かけ、実際の発作は想像よりも怖くないと気づいたり、慣れたりすることで恐怖を克服する。
薬物療法と認知行動療法のいずれか単独で改善できる場合もあるが、両者を併用することもある。しっかり治療をすれば、以前パニック発作が起きたような環境に身を置いても発作を起こさなくなることが期待できる。
村松医師は言う。
「患者自身はもちろんのこと、家族など周囲も、パニック障害は『病気』だと認識することが大事。たとえば発作が怖くて一人で外出できないことを、引きこもりだとか怠けているなどと決めつけず、病気の可能性もあることを知っておきましょう。専門医への受診を促し、正確な診断と適切な治療につながるよう手助けしてあげてください」
(ライター・熊谷わこ)
※AERA 2018年11月12日号
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