少子化が進む日本。私立大学は、生徒を集めるために様々な取り組みを始めている。中には施設面での充実を図ることで、魅力を増している大学もある。
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夕方になると、静まりかえっていた建物が、息を吹き返したように賑やかになった。大学から帰ってきた学生たちは、ラウンジに三々五々集まり、おしゃべりに興じる。時に英語や韓国語、中国語が飛び交うことも。
韓国人留学生で法学部2年の朴(パク)ヘチャンさん(21)は、みんなを盛り上げるムードメーカー。祖父が留学していたことから日本に親近感を覚え、早稲田大学への進学を決めた。
「人と話すのが大好きです。一生懸命勉強した日本語で、日本人の友だちとしゃべれるのがうれしいですね。恵まれていると思います」
2014年に竣工した早稲田大学国際学生寮WISH(Waseda International Student House)は、JR中野駅から徒歩10分の好立地にある。約900人のうち、4割が留学生で、現在24カ国の学生が滞在している。兵庫県出身の中嶋梨音(りおん)さん(政治経済学部2年、20)は、この環境に惹かれて入寮を望んだ。
「グローバルな環境のなかで生活を送ることに、魅力を感じました。日常的に留学生と接しているので、英語で会話する垣根が低くなりましたね」
エントランスにはセキュリティー付きの自動ドアが設置され、フロントデスクが24時間体制で警備している。
「初めは上京することに難色を示していた親も、WISHを見て、ここなら大丈夫だね、と送り出してくれました」(中嶋さん)
2階の一部と3階から11階までが寮生の部屋になっており、四つの個室が1ユニットになってリビングを共有する。学生が集う2階には、イベントキッチン、フィットネスルーム、浴室、グランドピアノ付きの音楽室が設置されている。各階にコミュニティーキッチンがあり、自炊することが交流の場にもなっている。朴さんは料理が得意で「朴ちゃんレシピ」と呼ばれるオリジナル料理を作り、寮生に振る舞う。おいしいと好評だ。
寄付金の補助があり、毎月の寮費は5万3千円と破格だ。寮で生活できるのは2年間だけだが、RA(レジデント・アシスタント)と呼ばれる世話役の寮生は、4年に延長できる。朴さんと中嶋さんはRAを務めており、後輩の相談に乗ったり、毎月開かれるイベントの企画や運営を行っている。10月にはハロウィーンパーティーを開催し、寮生がゾンビや吸血鬼、魔女に扮装して大いに盛り上がった。
早稲田のネットワークを生かしたSI(Social Intelligence)と呼ばれるWISH独自のプログラムも魅力だ。たとえば、キャリアセミナーではOB、OGがビジネス体験を話したり、起業した先輩が講演を行ったりしている。月~金曜日の夜に開かれ、寮生には週に1日以上の参加が推奨されている。
「人工知能の講演が面白かった。興味ある分野だったので、いろいろな質問をしました。大学とは違う分野を学ぶことができて、ためになります」(朴さん)