政治学者の姜尚中さんの「AERA」巻頭エッセイ「eyes」をお届けします。時事問題に、政治学的視点からアプローチします。
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先送りされていた消費税の増税が来年10月に決まりました。8%から10%への引き上げは過去に2度も延期になっていましたから、この決定はまさに「三度目の正直」です。
しかし、客観的にみれば過去の延期の時よりも今回のほうが、増税が難しくなりそうな雲行きです。日米間の貿易交渉の行方や激化する米中の貿易摩擦、中国経済の減速感や新興国の通貨不安、中東情勢の流動化や英国のEU離脱交渉の不透明感など、不確実な事態が世界経済に暗い影を投じ、ここのところ株価は激しくアップダウンしています。来年以降、世界経済は大きく落ち込む可能性があります。
2度目の消費税増税の延期が決まったのは、2016年6月でした。この時の延期の理由は、「リーマン・ショック級の経済的な不況が懸念される」というものですが、当時の景況感から見れば、それほどの経済的な危機が迫っていたとは言えませんでした。そう思うと、消費税率引き上げの延期は、牽強付会(けんきょうふかい)だったと言えます。