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少子化が進み、多くの大学にとって厳しい時代がやってきている。早稲田は先を見据えてすでに大学のスリム化を図っているが、一方で拡大路線をとることを対策とする大学も。逆風の中、大学が発展するためにはどうすればいいのか。
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拡大路線には、大規模校にすることで大学の世界で確固たる地位を得られるというねらいがある。さまざまな分野で活躍する人材を送り出すことでブランド力を付けたい。早慶上智、MARCH、関関同立のような総合大学になりたいと夢見る。
拡大路線でもっとも注目されるのが国際系学部だ。
文科省は盛んに大学のグローバル化を進めており、補助金、支援金がつきやすい。これは日本の大学が世界から大きな後れをとっていることに危機感を募らせていることによる。
こうした拡大路線を走る大学はさまざまな可能性を追いかけている。しかし、中身を整備せずただ拡大すればいいというだけでは、学生は集まらない。これは大学の規模の大小かかわらず。歴史が証明している。
たとえば、上智大は学部を増やしたが、郊外にキャンパスを作らないことで、ブランド力を守り続けた。
スリム化にせよ、拡大路線にせよ、文科省も大学の命運を握っている。いまさらながらの話だが、東京23区内に作ってはいけない、入学定員を超えて定められた基準の倍率以上の人数を入学させればペナルティーを科す、東京五輪の学生ボランティアを出すため学事暦の変更を認める、などとお上が箸の上げ下ろしまで指図してくる。
こんな現状に大学はとてもストレスを感じている。
大学は自分の得意分野を知り、身の丈にあった改革を行う。流行の学部を作るなど無茶はしない。文科省には、余計な指図をせず国から独立した機関として大学を見守り、金は出すけど口ははさまない、を徹底させる。
大学は独自の教育改革、グローバル化推進、就職支援の強化、福利厚生の充実、経営基盤の整備、研究水準の向上など、さまざまな分野でより力を入れることが求められる。
少子化という逆風にあって、大学を発展させるために必要なことである。(教育ジャーナリスト・小林哲夫)
※AERA 2018年11月5日号より抜粋
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