稲垣えみ子(いながき・えみこ)/1965年生まれ。元朝日新聞記者。著書に『寂しい生活』『魂の退社』(いずれも東洋経済新報社)など。『もうレシピ本はいらない 人生を救う最強の食卓』(マガジンハウス)も刊行
稲垣えみ子(いながき・えみこ)/1965年生まれ。元朝日新聞記者。著書に『寂しい生活』『魂の退社』(いずれも東洋経済新報社)など。『もうレシピ本はいらない 人生を救う最強の食卓』(マガジンハウス)も刊行
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コーヒーを飲むときも油断して「マグカップで!」と言い忘れるとこのようなことになる(写真:本人提供)
コーヒーを飲むときも油断して「マグカップで!」と言い忘れるとこのようなことになる(写真:本人提供)

 元朝日新聞記者でアフロヘア-がトレードマークの稲垣えみ子さんが「AERA」で連載する「アフロ画報」をお届けします。50歳を過ぎ、思い切って早期退職。新たな生活へと飛び出した日々に起こる出来事から、人とのふれあい、思い出などをつづります。

【コーヒーを飲むときも「マグカップで!」と言い忘れると…】

*  *  *

 近頃マイクロプラスチック汚染の問題をよく耳にするようになりました。分解されないプラスチックが海に流れ込み、海洋生物の体に取り込まれているという。

 しかし私、プラスチックについては少し前から問題性を認識しておりましたぞ。それは会社を辞める直前、有休のまとめ取りで出かけたインド旅行がきっかけでした。

 夢にまで見たアーユルヴェーダ(インドの毒出し療法)の治療施設は実に美しい場所だったのですが、敷地を一歩出ると街はどこもかしこもゴミだらけ。道路わきに埋めたゴミが地表にあふれ、収拾がつかなくなっていたのです。都市化に伴って「燃えないゴミ」が急増し、処理が追いつかないのだなと想像。誠に人の毒とは計り知れない。優雅に毒出しなどとはしゃいでる場合じゃなかった。

 にしても、街に行き場のないゴミがあふれている光景って目の当たりにすると精神がやられます。日本は原発じゃなくてゴミ処理のシステムを輸出すればいいのに! その方がよほど感謝されるのにぃ! などと息巻いていたのですが、よく考えれば日本のシステムだってプラごみを見えない場所へ移動しているだけで、なくしているわけじゃないと思い至る。我が行動を振り返っても日々どれほどのプラスチックを買い、捨てていることか。このなんとも言えぬ光景は他人事ではない。

 ということで、これからは「プラごみは出さない」暮らしを人生の指針に掲げようと、鼻息荒く帰国したのであります。

 ところが。これがまーったくもって簡単じゃない!

 スーパーでレジ袋を断ることなどは当然やっておりますが、それ以前に、野菜も肉も魚も生鮮以外の商品も、ほぼすべてがプラスチック容器に入っているじゃありませんか。プラスチックを拒否していたら何も買えぬ。餓死しかねません。このところ大手小売企業がプラストローを廃止したなどと話題になってますが、もう全然そういうレベルの話じゃないのであります(つづく)。

AERA 2018年10月8日号

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