警官が聴衆や報道陣に、

「危ないから、下がって」

「まだ何があるかわからない」

 と興奮しながら大声をあげるなか、身柄を確保された男は11時半ごろにパトカーに乗せられた。

 男は最初に取り押さえられたときから、声をあげたり、抵抗したりしている様子はなかった。

 演説会場は、屋根がある「セリ場」のような場所。岸田首相が到着する1時間以上前から、周囲はSPや制服警官が数十人、警戒にあたっていた。

 報道陣は取材位置を決められ、聴衆も黄色いコーンで囲まれた一角で聞くように誘導されていた。聴衆は地元の漁師やその家族らが大半とみられ、ざっと百数十人くらい。

 昨年7月の安倍晋三元首相の銃撃事件から1年もたたずして起きた「爆破事件」。岸田首相と並んでいた際に爆発物を投げつけられた候補者は、

「驚くばかりだ。それ以上、今は何も言えない」

 と答えた。

 男のすぐ前で様子を見ていた地元の竹内愛さん(46)は、

「私は前から5、6列目に立っていました。岸田首相の姿が見えて演説が始まるかなと思ったら、顔の右側を長さ15センチ程度の銀色の筒が通過していったのが見えて。筒からは煙が出ていて、なんだろうと思ったら、すぐに『この男や』って近くの人が飛びかかっていって。それからドーンと爆発音が聞こえて。本当にびっくりで、動揺しています」

 と話し、最前列にいた男性も、

「『キャー』とか声が聞こえたと思ったら岸田首相の横に何かが落ちて、すぐに警備の人がかけよって岸田首相を囲んでいた。その後、数秒~10秒くらいして爆発した。岸田さんが後ろを向いているときに飛んできたと思う。爆発したとき、『ズドン』という威力がある感じだったので、もしもあたっていたらとんでもないことになっていた」

 とそのときの状況を語った。

 二度と起きてはいけない“テロ”がまた選挙中に起きてしまった。

(AERA dot.編集部 今西憲之)

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今西憲之

今西憲之

大阪府生まれのジャーナリスト。大阪を拠点に週刊誌や月刊誌の取材を手がける。「週刊朝日」記者歴は30年以上。政治、社会などを中心にジャンルを問わず広くニュースを発信する。

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