ステーキの脂身を残し、ドレッシングはノンオイルを選ぶなど、油分を避けている人。その努力、的外れかもしれない。話題の『医者が教える食事術』の著者で20万人もの患者を診察してきた、AGE牧田クリニック院長の牧田善二医師によると、「油のカロリーで太る」は大きな誤解だ。
【図】昔流行った健康ブーム覚えてますか?食や健康にまつわるトレンドの変遷
ヒトの三大栄養素は、炭水化物、タンパク質、脂質の三つ。日本人食事推奨量は、30~49歳の男性で炭水化物381グラム、タンパク質60グラム、脂質74グラム。女性は炭水化物288グラム、タンパク質50グラム、脂質56グラム(15年厚生労働省食事摂取基準)。牧田医師は言う。
「炭水化物がとても多く、対して脂質はわずか5分の1です」
炭水化物がエネルギーになり、タンパク質が筋肉や骨をつくる。脂質ももちろん体に必須だ。
「脂質の用途はたくさんあります。37兆個の細胞の細胞膜をつくり、副腎皮質ホルモンや男性ホルモン、女性ホルモンの元になり、脂肪の分解や吸収に必要な多量の胆汁をつくるのに必要な成分です。不足しがちなコレステロールはわざわざ肝臓でつくっているくらいです」
脂質の消化吸収率は、ほぼ100%の糖質に比べて低く、取りすぎれば便として排出される。
「体まわりの脂肪は、取りすぎた炭水化物をエネルギー源として蓄えたもの。実情はおなかまわりにたまった脂肪のほとんどが炭水化物由来です。そしてその脂肪が、脂質本来の役割を果たすことはありません」
良質の油を取ることは、むしろ重要だ。ただし、牧田医師からこんな注意が。
「料理にたっぷりオリーブオイルをかけるのはいいですが、変性しにくいとはいえ、新鮮なうちに使うことです。フライはお勧めしません。油は高温の加熱でも変性するからです」
空腹時におにぎりや甘いものを食べると、じんわり広がる幸福感、身に覚えがあるのでは。
「人間はブドウ糖と酸素を反応させ、エネルギーにして生きています。ブドウ糖の元になる炭水化物を取ると、幸せを感じるように太古からプログラムされているのです」(牧田医師)