米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)の名護市辺野古沿岸域への移設をめぐって、「満身創痍」で政府と対峙してきた沖縄県の翁長雄志知事が、8日午後7時までに入院中の浦添総合病院で死去した。67歳だった。
この日午後5時、県庁で会見した沖縄県の謝花喜一郎副知事は、翁長知事が入院先で意識混濁の状態となったことを明らかにし、自らが職務代理者を務めると発表。がんが肝臓に転移したため肝機能が低下し、7日から徐々に意思決定に支障を来し意識混濁の状況になったという。
翁長知事は4月25日に膵臓がんの手術を受け、5月15日にいったん退院していた。この際、県庁で会見し、「ステージ2の膵がん」と公表した。
ただ、官邸筋は別の見方をしていた。
知事の病態は「ステージ4」との情報を得て、翁長知事の体力がもたないとの判断から任期満了に伴う11月18日投開票の知事選が前倒しされる可能性もある、と踏んでいた。安倍政権側は、知事選の候補者として「公明、日本維新の会両党の支援を得られる」(自民党関係者)との理由から、佐喜真淳・宜野湾市長に地元の自民党沖縄県連が立候補を要請。佐喜真氏も受諾している。自民党関係者はこう言う。
「翁長氏が立候補できない場合を想定した世論調査の準備などを進めています」
一方、翁長知事は7月27日に名護市辺野古の新基地建設に伴う埋め立て承認について、「公益に適合しない」などの理由で撤回すると表明。「新基地は造らせないとの公約実現に向け、全力で取り組む」と改めて強調していた。沖縄県側には、「撤回」により国の工事を一時中断に追い込み、早ければ8月17日にも予定される辺野古沖での土砂投入を遅らせる狙いがあった。
翁長氏の死去を受け今後、沖縄県政はどう対応するのか。現段階では「撤回」に向けた手続きが実質的に進むのかも不透明な情勢だ。
一方で、知事選の前通しは確実となった。9月実施の声も聞かれる。