マキタスポーツ/1970年、山梨県生まれ。俳優、著述家、ミュージシャンなど多彩な顔を持つ。スポーツ用品店だった実家の屋号を芸名に。著書に『すべてのJ-POPはパクリである』『一億総ツッコミ時代』ほか。映画「苦役列車」でブルーリボン賞新人賞受賞
マキタスポーツ/1970年、山梨県生まれ。俳優、著述家、ミュージシャンなど多彩な顔を持つ。スポーツ用品店だった実家の屋号を芸名に。著書に『すべてのJ-POPはパクリである』『一億総ツッコミ時代』ほか。映画「苦役列車」でブルーリボン賞新人賞受賞
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そもそも、問題意識を持ってテレビを見ている人はいるのだろうか(※写真はイメージ)
そもそも、問題意識を持ってテレビを見ている人はいるのだろうか(※写真はイメージ)

 お笑い芸人のマキタスポーツさんによる「AERA」の新連載「おぢ産おぢ消」。俳優やミュージシャンなどマルチな才能を発揮するマキタスポーツさんが、“おじさん視点”で世の中の物事を語ります。

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 私はワイドショーを見るともなしに見ている。

 出る立場だったことがある。その時はキツかった。何故ならルールがあるから。司会者の求めるコメントを言わないと場が白けるし、視聴者にもカスタマーサービス(顧客対応)した“ご満足意見”を言わなければいけない。人のニーズに即した定型を言うのは退屈だった。

 その意味ではあそこでコメントしている人達は皆プロである。私は単なる好奇心を持て余したわがままな客止まり。案の定レギュラーを外された。

 この原稿を書いている時点では日大問題がまだ潰えていない。これが無くなることが、「とても」というほどじゃないが、ちと惜しい。田中理事長なる人物は見るともなしに見るのに打って付け。出てこないから益々軽めに欲情。とびっきりの“悪党に見える”からなるべく引っ張ってもらいたい。

 そもそも、問題意識を持ってテレビを見ている人はいるのだろうか。疑問である。

 テレビを作る側には「おやくそく」がある。サブリミナル効果を使わないとか、公平中立性を重んじることとか、公序良俗に反さない、あと、民放ならば、スポンサーに対する悪口は言わないとか……。これは言わば、国の免許事業であり、公共の電波を使用することを許された特権的な立場だからこそ最低限備えるべきこと。要するに「煽らない」、「偏らない」ということだと思われる。しかし、一番の「おやくそく」は違うものだ。

 テレビにおいて最大のおやくそくごとは、作り手側も、見る側も「見ない」と言わないことである。つまり問題意識を持つなら「テレビを消す」ことだ。

 昨今、インターネットの台頭で、相対的に力の弱まったテレビはそのポジションに胡座をかいていられなくなったことは周知。「見なくていい」ということをわざわざ言わなくても端から“見ない”という人達が登場することで、私の言うテレビに関する「問題意識」が宙に浮いた格好になっている。興味深いのは「見たいものしか見ない」という新種が登場し、益々テレビは「大して見たくもないものが垂れ流される」に状態が極まっている点だ。

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