浅田真央、宇野昌磨、安藤美姫……フィギュアスケートの名選手が多数生まれた、フィギュア王国・名古屋。その強さを支える土壌について、メ~テレの倉橋友和アナウンサーが語った。
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230万人の「ナゴヤ人」が魂を揺さぶられた瞬間でした。
2月の平昌五輪・男子フィギュアスケートのフリーの演技。冒頭の4回転で転倒したにもかかわらず、見事に立て直し、銀メダルに輝いた宇野昌磨選手のトゥーランドットにです。
ナゴヤ人は、幼少期から宇野選手の天才ぶり、そしてその後の成長ぶりを、メ~テレなど地元メディアを通して目に焼き付けてきました。今回もローカルメディアは宇野選手の活躍を手厚く扱いましたが、もちろん全国メディアでも羽生結弦選手との日本人ワンツーフィニッシュを大々的に取り上げました。
「日本の羽生結弦」ですから、名古屋でも人気があります。でも、同じく国民的人気の浅田真央さんは「日本の真央ちゃん」ではなく、永遠に「名古屋の真央ちゃん」。これが名古屋イズムなんですね。
同じく名古屋の宇野選手に全国が注目したからこそ、ナゴヤ人のプライドがくすぐられるのです。名古屋の価値が分かっているねと。あどけなかった「昌磨くん」が、強さと色気を兼ね備えた大人のイケメンに成長した。名古屋生活17年目、ほぼ100%ナゴヤ人になったと自負する私も、誇りと幸せを感じました。
私がフィギュアスケートの実況や取材に関わり始めた約10年前、地元・名古屋などで開催される「中部選手権」と「愛知県選手権」のローカル大会を担当しました。試合会場には200人を超える数多くのジュニアやノービス(ジュニアの下のクラス)のちびっ子スケーターたちが、目を輝かせながら一生懸命滑っているではありませんか。
「この中から将来、日の丸を背負う選手が出てくるのかな」
そう思いをはせ、取材者として大いなるロマンを感じました。このとき目の当たりにした裾野の広さこそが、フィギュア王国の象徴そのものであると痛感します。東京の下町育ちの私の周りには、スケートを習う友達は一人もいませんでしたが、名古屋では習い事の選択肢にスケートを考えている親御さんも多くいるのです。