京都御所に向かう天皇、皇后両陛下の車列に、発煙筒と爆竹が投げられた。投げた犯人を取り押さえる警察官(1990年12月)
京都御所に向かう天皇、皇后両陛下の車列に、発煙筒と爆竹が投げられた。投げた犯人を取り押さえる警察官(1990年12月)

 元宮内庁職員で、皇室解説者の山下晋司さんは、自身が職員であった頃の一般参賀の警護についてこう振り返る。

「一般参賀で人びとが皇居に入る際は、警察による手荷物検査などがあります。参賀者は、二重橋を通って皇居に入ります。その道筋と皇居の敷地内には、私服の警察官が至る所に配置され、不審な人物がいないか、じっと参賀者を監視していました。いまも基本的な体制は変わらないと思います」

 平成も半ばを過ぎると、反皇室を掲げる過激派組織らによる事件はほぼ姿を消した。その一方で、衝動的な動機による脅迫事件が目につくようになった。

 もちろん天皇や皇族方の生活は、公私にかかわらず護衛がついている。お住まいから一歩出れば、常に皇宮警察の護衛官が付き添い、身辺を守る。学校を含めた私生活の場でも同じだ。学校には護衛官が待機する場所が設けられ、生徒の邪魔にならないよう存在感を消しつつ身辺を守る。

主要ポストに警察官僚続々

 皇族がプライベートで遊びに行く先では、地元の警察官が加わり警護することもある。

 東京近郊の遊戯施設で女性皇族を取材していたある記者は、こんな体験をしたことがある。邪魔にならないよう、距離を置いて見守っていた。

 ベンチでひと休みしながら同僚との雑談をしていたときだ。ふと後ろを振り向いて、ギョッとした。

「黒っぽいスーツを着た男性が、ぴったりと自分の背後にくっついて我々の話に聞き耳を立てていたのです。イヤホンをしているので、すぐに警察だとわかりました。5センチと離れていないのに、気配をまったく感じなかった。プロですね」

 実はここ数年の間に、宮内庁の主要ポストに警察官僚らが集められている。

 まず、宮内庁のトップである宮内庁長官のポストだ。宮内庁長官は20年近く、かつての自治省や厚生労働省出身者が務めてきた。しかし、令和への代替わりの儀式の対応もあり、警備畑を長く歩み、第90代警視総監、内閣危機管理監を務めた西村泰彦氏が宮内庁長官に就任した。秋篠宮家に仕える皇嗣職のトップ、皇嗣職大夫の加地隆治氏も警察庁出身だ。

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血なまぐさい事件を経験した警察官僚を配置