上洛殿を抜けると、大橋さんが、もう一つの見どころと勧める湯殿書院がある。同事務所によると、将軍専用の浴室(湯殿)と、脱衣場に相当する座敷3室からなる風呂場のことだが、湯船はなく、外で湯を沸かし湯気を内部に引き込むサウナ式の蒸し風呂だったという。

 新公開エリアを一通り見て回った徳重アナは「欄間など装飾もすてきなので、双眼鏡を持ってきたほうが本丸御殿をより楽しめそう」と興奮気味だった。

「観光する場所がない」と、よく言われる名古屋市で、観光名所の最前線に居座ってきた名古屋城は今、原点に立ち返り、元の姿に復元することで、新たな魅力を広めようとしている。

 復元を目指すのは本丸御殿だけではなく、天守閣もだ。城郭として国宝第1号だった名古屋城は、45年の戦災で天守閣も焼け落ちた。戦後、鉄骨鉄筋コンクリート造りで再建されたのが今の天守閣だが、耐震性などの問題から、名古屋市が木造復元を計画している。ちょうど本丸御殿を取材した前日の5月7日、天守閣は閉鎖され、現在は入ることができない。復元工事が終わるのは22年12月の予定だ。

 閉鎖されたばかりの天守閣を前に、名古屋城天守閣の緑色の屋根について、徳重アナが案内役の大橋さんに質問した。

「実はこれは、さびて、この色になっているんですよね」

 大橋さんが説明する。

「そうです。酸化してこの色になったので、もともとは銅の赤褐色のようです。復元された場合、だいぶ印象が変わるかもしれません」

 徳重アナは「今の色がとても桜に合うので、色が変わるのはちょっと寂しいです」。

(編集部・山本大輔)

AERA 2018年6月25日号より抜粋