サウジアラビアでの最終レースの前の福永祐一さん(左)と松尾翠さん(画像=松尾さん提供)
サウジアラビアでの最終レースの前の福永祐一さん(左)と松尾翠さん(画像=松尾さん提供)
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 2月末でジョッキーを引退し、調教師に転向した福永祐一氏(46)。日本中央競馬会(JRA)で歴代4位の通算2636勝を挙げた名騎手を支えたのは、妻の松尾翠さん(39)だ。落馬事故によるけがを乗り越えながら、クラシック完全制覇などの偉業を成し遂げた福永氏を心身両面でバックアップしてきた。今、夫の騎手引退について何を思うのか。結婚10年の夫婦の歩みとともに、輝かしい実績の裏にあった秘話を聞いた。

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――福永祐一さんは、2月25日のサウジアラビア国際競走がラスト騎乗となりました。福永さんのジョッキー人生を最も近くで見てきた松尾さんとしては、今、どのような思いがありますか。

 本当に……いろいろありましたね(笑)。けがが重なってしまったときもあったし、思うように勝てなかったときもありました。でも、私はそれを悪くとらえることは絶対にしたくないと思っていました。大きな流れのなかで『今は少しかがむとき』と考え、これは壮大な人生のドラマのひとつなんだと思って、日々を過ごしてきました。そうして振り返ってみると、なかなか勝てなかったダービーを取って、3冠馬にも出会うことができた。魔法のような、ドラマチックな経験を何度もさせてもらいました。でも、実はそれは魔法ではなくて、彼が日々コツコツと技術や思考を磨きながら歩んできたからこそ、成し得たことです。だから、その一日一日を振り返ると、本当にいろいろあったなあと。

――福永さんと松尾さんは2013年8月にご結婚され、今年は結婚10年という節目でもあります。この10年間、「騎手の妻」として心がけていたことはありますか。

 アスリートの妻として栄養面のサポートやコンディションを整える環境づくりは心がけていましたが、それ以上に、レースの“結果”はあまりこだわらないようにしていました。おそらく皆さんが思っているよりも騎手は一日に多くのレースに乗っていますし、本当にまずは無事にけがなく帰ってきてくれることが一番でした。それでも、騎手は勝負師ですから「このレースは負けて悔しい」という気持ちは絶対にあるはずなので、それを引きずらないように、私は家の中の雰囲気を明るくすることを常に心がけていました。

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落馬事故の直後は「私の出番だ」