日朝首脳会談を探る安倍首相。プーチン大統領とのパイプを生かした9月のロシア開催説も浮上するが、肝心の拉致問題をどうするのか (c)朝日新聞社
日朝首脳会談を探る安倍首相。プーチン大統領とのパイプを生かした9月のロシア開催説も浮上するが、肝心の拉致問題をどうするのか (c)朝日新聞社
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今年航空自衛隊に配備された米国製の最新鋭戦闘機F35A。安倍首相に頼まれ米朝首脳会談で拉致問題に言及したトランプ大統領は、日本に兵器購入と北朝鮮への経済支援を期待している(撮影/藤田直央)
今年航空自衛隊に配備された米国製の最新鋭戦闘機F35A。安倍首相に頼まれ米朝首脳会談で拉致問題に言及したトランプ大統領は、日本に兵器購入と北朝鮮への経済支援を期待している(撮影/藤田直央)

 シンガポールでの史上初の米朝首脳会談を経て、安倍内閣に突きつけられた課題は二つ。まずは拉致問題だ。

【写真】航空自衛隊に配備された米国製の最新鋭戦闘機F35A

 6月12日夕、安倍晋三首相が官邸の記者団の前に現れた。

「日本にとって大切な拉致問題について、トランプ大統領がしっかりと言及していただいたことを評価します」

 この時、トランプ氏は金正恩朝鮮労働党委員長との会談を終えて記者会見中で、拉致問題は「取り上げた」と述べた程度。それでも安倍氏は「米国の大統領が金委員長に明確に言及したのは初めてだ」とたたえた。

 金氏が独裁政権存続の保証を得ようと渇望した米国大統領との会談。安倍氏はそこへ拉致問題をねじ込もうと、トランプ氏とのパイプを駆使し、前夜も電話で念を押していた。

 北朝鮮の非核化が進むかどうかでは評価の分かれる米朝首脳会談だが、安倍氏にすればいかに拉致問題解決につなげるかだ。「日本がしっかりと北朝鮮と向き合い解決していかねばならない」と記者団に述べた。

 だが、北朝鮮は硬い。朝鮮中央通信は5月に「日本が誇張する拉致問題は解決済みだ」と主張。過去の植民地支配に触れ日本こそ加害者だとし、「償いのみが日本を救う」と結んだ。

 安倍氏は2日後に反論。十数年前の小泉内閣での日朝交渉を振り返り、「8名の方々は死亡していると(北朝鮮に)言われたが死亡証明書等はでたらめで、遺骨も偽物だった。皆さんが生きておられることを前提に全ての拉致被害者の即時帰国を目指したい」。そして、「日朝の会談を金委員長に決断してもらわないといけない」と語っている。

 トランプ氏は金氏との会談後の記者会見で「彼らは拉致問題に取り組む」と語った。その解決が、北朝鮮の非核化でトランプ氏が日本に望む巨額の経済支援の前提になる。北朝鮮経済が立ちゆくまで10年で220兆円かかるとの民間試算もある。

 首相続投へ安倍氏の3選がかかる自民党総裁選は9月。その頃にロシアでの国際会議で金氏と会うかもしれない。繰り返してきた「安倍内閣で拉致問題を解決する決意」が問われる。

 もう一つの課題は、対話しようとする相手に対して備えてきた防衛力をどうするのかだ。

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