リリー:星屑スキャットの曲だけじゃなくて、3人のソロもしっかり聞いてから作ったからね。3人それぞれのチョイスって、すごくかわいかったり、ウェットだったりするのに、星屑スキャットには持ち込まないようにしてるんだなって気づいて。だから、ソロと星屑スキャットの中間を探っていったんです。それと、シャンソンがダサい、古くさいと思われないようにっていうところには気を使ったね。

ミッツ:星屑スキャットは歌謡曲というジャンルから出てきたグループですし、女装した3人だし、いい年齢にもなっている。だから、どうしても昭和がついて回るんだけど、それに対する反発心もあって、ずっと今の音楽にこだわってきたんです。

リリー これまでの集大成でもあるディスク1も、すごくよかった。女装して歌謡曲っぽいものを歌うと、ともすれば、懐古主義的な人たちと思われてしまう。でも、今のサウンドになっているし、ダンスミュージックとしてアルバムが成立しているから格好いい。だからこそ、「新宿シャンソン」との対比が際立つ。

ミッツ:「化粧室」は、星屑スキャットがこだわってきた歌謡曲に対する「ごっこ遊び」のテーマを自分たちの経験値をすべて生かして作り上げたアルバムなんです。曲の並びも100回くらいシミュレーションしましたし、昔のレコードのようにA面、B面も考えた構成にもなってるんです。

和恵:ジャケットのアートディレクションを担当したのは私なんですけど、ディスク1は星屑スキャットのライブをイメージさせるポップさを、ディスク2は「新宿シャンソン」が描く世界を表現したかったんですよね。リリーさんとも相談して、「新宿シャンソン」は早朝の東の空が白んでくる時間帯で撮影しようと。

ミッツ:だけど、15分くらいで空が明るくなってしまう。

和恵:そうなの。だから、事前に何時何分にこの場所って撮影ルートをしっかり決めて。「絶対にここ」という場所で無事に撮れたときはほっとしましたね。メイリーさんがどの場所でも1人、切り取られたような不思議な日常感をまとってますけど(笑)。

ミッツ:メイリーさん、撮影のとき、心が飛んでいたんですよ。

メイリー:ずっと空、見てました(笑)。

ミッツ:でもそれも「新宿シャンソン」っぽいのかな。リリーさんが司会していらっしゃるNHK-BSの音楽番組「The Covers」で初めて聞いた方から「賛美歌みたいですね」って言われることも多いんです。

リリー:そう聞こえるのは、「吸い上げ系」の曲だから(笑)。

(ライター・角田奈穂子)

AERA 6月18日号より抜粋

暮らしとモノ班 for promotion
台風、南海トラフ地震、…ライフライン復旧まで備える非常食の売れ筋ランキング