きっかけは歌番組だった。歌声を聞いてリリー・フランキーがほれ込むグループがいる。歌詞を書き、作曲家を頼み、ライブ伝説の曲はついにCDになった。多方面からラブコールを受ける男が愛を注ぐ、星屑スキャットの魅力とは。
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ミッツ・マングローブ(以下ミッツ):リリーさんとの出会いは、6、7年前のテレビ番組ですよね。リリーさんが司会で私がゲストでした。歌のコーナーに星屑スキャットとして出演したんです。
リリー・フランキー(以下、リリー):歌を聞いて「すごいな、この人たち」と驚いて、すぐに曲を持って新宿ゴールデン街まで行ったんだよね。「コレ、歌ってもらえませんか?」って。3曲くらい用意したうちの1曲が、今回のアルバム「化粧室」のディスク2になった「新宿シャンソン」。
ミッツ:星屑スキャットはずっとカバーもオリジナルもアップテンポなものが多かったし、シャンソンは新鮮でした。
メイリー・ムー(以下、メイリー):私たち、シャンソンはあえて避けていたんですよね。先輩のお姉さんたちのジャンルだと思っていたし。
ミッツ:シャンソンを歌うには、よほどの覚悟がないと。
リリー:俺は3人が歌うなら、シャンソンは外せないと思ったんだよ。ミッツによく言われるんだけど、「新宿シャンソン」は、新宿2丁目に対するファンタジーが過剰らしい。でも、そういうトゥーマッチな曲は自分たちだけだったら、一生やらないじゃないですか。逆に俺みたいにファンタジーを抱いている人がいちばん無邪気に作っちゃう。
ミッツ:そうね。フィクションなんだけど、歌っていて身につまされる部分もあるし、そんなにきれいにいかないよね、っていうところもあって。すごいリアルなフィクションが描かれてると思う。
メイリー:「新宿シャンソン」は最初から自由に歌えているという感覚がありました。でも、伸び伸び歌っているつもりなのに、自分の感情や人生を乗せて歌っている感覚もあって。今回の録音で3人だからうまく歌えているというのをあらためて感じましたね。
ミッツ:絶妙なバランスが出るのよね。業とか性とか、歌手として課せられているお勤めみたいなものも出てしまう。その「お勤め感」がないと、エンターテインメントって独りよがりになってしまうから、とても大切ですよね。
ギャランティーク和恵(以下、和恵):星屑スキャットの他の曲は、もっとライトで硬質なボーカルで歌っているんですけど、「新宿シャンソン」をいただいたとき、湿度の高い感じで歌わなきゃ、って感じましたね。私はしっとりした曲も好きなので、「新宿シャンソン」はその気持ちを存分に引き出してくれました。