パナソニックβの取り組みを通じて変革に挑む。米シリコンバレーに構えた拠点の目の前には米アップル本社がある(撮影/大河原克行)
パナソニックβの取り組みを通じて変革に挑む。米シリコンバレーに構えた拠点の目の前には米アップル本社がある(撮影/大河原克行)
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ビジネスイノベーション本部の馬場渉本部長(撮影/大河原克行)
ビジネスイノベーション本部の馬場渉本部長(撮影/大河原克行)

 家電製品はメイド・イン・ジャパンの代名詞だった。だが中国企業に押され、各社は巨額の赤字に苦しんだ。そこで東芝は不正に手を染め、解体にまで至った。パナソニックは耐えて残り、創業100年を迎えた。すでに未来に向けて、大胆な仕掛けをつくっている。

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 パナソニックの特徴は、創業者の松下幸之助によってつくられた事業部制だ。いまも37の事業部が存在する。事業部では洗濯機は洗濯機、テレビはテレビと、それぞれが独立したビジネスを展開する。

 だが、次の100年を考えると、事業部制のままでは限界がある。当然、同社の津賀一宏社長も気がついている。そして、打開するために二つの仕掛けをつくった。

 ひとつは、カンパニー制の導入だ。事業部という業績が見える枠組みの上に、社内カンパニーという産業領域の特性を捉える組織をつくり、そのなかで連携を進める形にした。現業の延長線上で、時代にあわせてビジネスを拡大する仕掛けだ。

 もうひとつが、津賀社長が就任直後から打ち出した「クロスバリューイノベーション」。最近では、事業部や社員などが横につながる「ヨコパナ」という表現も用いる。ヨコパナは、これまでにない新たなビジネスを創出する色彩が強く、カンパニーを超えた取り組みも含まれる。

 その最たる例が、米シリコンバレーを拠点に動き出した「パナソニックβ(ベータ)」である。

 欧米のデジタル企業が採用するデザインシンキング(市場や需要ではなく人間を中心に据えた商品開発)を用い、不完全の段階であるベータ版のままで使ってもらい、利用者の意見をもとに改良を加え、品質や利便性を高めていく「アジャイル」型の開発を進める。拠点にはカンパニーの枠を超えて、デザイナー、ソフトウェアとハードウェアの技術者、データ科学者のほか、AIやロボットの専門家、建築士などの職能を持った人材が集まり、アイデアを形にする試みが繰り広げられている。

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