「SNSなどであらぬうわさを立てられないようプロフィルを伏せる」という人も。自分や他人を傷つけないための正しい「ウソ力」なら、身につけておいたほうがいいのかもしれない。
ウソ問題に子どもが絡むと事態はかなり深刻になる。学校の先生からウソをつかれたと話すのは団体職員の女性(48)だ。
「ウソつきだったのは、娘が小学5年生のときの担任です。家庭訪問時は来なかったのにもかかわらず、『インターホンを押しても出なかった』と言い張った。押せば録画が残るタイプなので、来ていないことは明らかなんですけどね」
娘がクラスでいじめに遭った際も「当事者と教師で話し合って解決した」と報告があったが、実態は担任がいじめた児童を怒鳴っただけで話し合いはなし。
「小学校の担任の言葉や態度は子どもにとって、とても重いもの。娘は大人への不信感を持ってしまったようです」
自分の子どものウソを吐露したのは保育士の女性(52)。中学1年になる娘が小学校時代は、宿題は「出ていない」とごまかす、友達の連絡帳が家のゴミ箱から見つかる、自分で決めたのに受験勉強をサボる、親の財布から小銭が消える……と、数々の行状に悩まされてきた。
「住んでいるのが、ちょっと悪ぶっている子が多い地域。周りに流されたのか、ウソをつくことへのハードルが低いんだと思うんです」
女性は続ける。
「実は中学受験に失敗したんですが、かえって良かったと思っています。本人はショックだったようですが、ごまかして真面目にやってこなかった結果を初めてつきつけられた。公立中へ進みましたが、友人関係など環境も変えるために別の学区に越境通学しています」
苦い経験が、ウソの罪深さや人間関係の機微を学ぶことにつながってくれたら、と母は願っている。(ライター・浅野裕見子)
AERA 2018年6月11日号より抜粋