マキタスポーツ/1970年、山梨県生まれ。俳優、著述家、ミュージシャンなど多彩な顔を持つ。スポーツ用品店だった実家の屋号を芸名に。著書に『すべてのJ-POPはパクリである』『一億総ツッコミ時代』ほか。映画「苦役列車」でブルーリボン賞新人賞受賞
マキタスポーツ/1970年、山梨県生まれ。俳優、著述家、ミュージシャンなど多彩な顔を持つ。スポーツ用品店だった実家の屋号を芸名に。著書に『すべてのJ-POPはパクリである』『一億総ツッコミ時代』ほか。映画「苦役列車」でブルーリボン賞新人賞受賞
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この文章がつまらない理由(※写真はイメージ)
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 お笑い芸人のマキタスポーツさんによる「AERA」の新連載「おぢ産おぢ消」。俳優やミュージシャンなどマルチな才能を発揮するマキタスポーツさんが、“おじさん視点”で世の中の物事を語ります。

*  *  *

「好き嫌い」について考えてみる。

 言葉の使い方として、

「好き嫌いを言うな」

「この子は好き嫌いが多くて」

「好き嫌いなく、なんでも食べるようになった」

 などが挙げられる。私達が生まれるはるか前から使われていると思われ、おそらくあまり食べ物がない時代に作られた言葉のはず。

「ある物を黙って食え」

 という裏メッセージが含まれているような気がする。

 ちと重たい。

 だいたい、飽食の現代にこんな裏メッセージはないだろう。点検が必要な言葉だ。

 それにしても、皆、嫌いな物に対して口が悪い。

「ピーマンだけは意味がわからない」

「椎茸……聞いただけでも吐き気がする」

「生魚は無理、マグロだけは別だけど」

 何なのか、この思い上がった言い方は。最後のやつは、私の知人が実際に言っていたもの。「ハゲは無理。外国人のハゲは別だけど」。おまえの言っていることはこれと同じだと叱っておいた。

 特徴的なのは、皆、自分が悪くないような口ぶりなところ。アレルギーだったら話は別だが、そうじゃない、単なる“好き嫌い”で、「嫌い=おまえの方が悪い」と決めつける論法なのである。食べ物だけは絶対に自分を見放さないと思っているのか、甘ったれた物言いだ。

 ところで、前から思っているのであるが、世間から「不味い物」がなくなってきているのだがどうか。冷静になって考えてほしい、相変わらず不味い物がないわけじゃないが、“大外れ”というほどのものはそんなにないのである(例えばラーメン。私の子供のころから比べれば、確実に均質化し、偏差値は上がった)。然るに、辺り一帯美味しいものに囲まれた世の中で「あれ食いたくない、これは不味い!」とかほざいている子供のような存在が現代人だと思うのだ。

「自分のせいにしてみる」

 私が実践していることがこれだ。

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