最初は気軽に考えていたマユミさん(仮名)も、全身麻酔で意識を失った息子を見て、急に不安がこみ上げてきたという。
「目を覚まさなかったらどうしようと、麻酔が切れるまで気が気じゃありませんでした」
現在大学生の息子が、包茎の手術を受けたのは小学2年の時。
「赤ちゃんの時に保健師さんから、おちんちんが剥(む)きにくい、大きくなってもそうだったら手術した方がいいと言われたのが引っかかっていたんです」
小学校に上がっても状況は変わらず、受診した病院で手術を勧められて決心した。手術は無事終わったが、実は、この手術、早計だったのかもしれない。
包茎とは、亀頭が包皮に覆われた状態のことをいう。包皮は先端の包皮口を境に、亀頭に接する内皮(内板)と外側を覆っている外皮(外板)の二重になっている。赤ちゃんは、尿道下裂など先天性の異常がない限り、おちんちんが朝顔のつぼみのように包皮で包まれており、9歳頃から自然に剥けて、通常思春期の頃には亀頭が露出する。
包茎には仮性包茎、真性包茎、嵌頓(かんとん)包茎の3種類がある。包皮をペニスの根元に寄せると内皮が反転し亀頭が現れる状態が仮性包茎で、見た目を気にしなければ機能上は問題ない。欧米では仮性包茎は包茎と見なされないことが多い。
真性包茎は内板が亀頭に癒着していたり、陰茎に対して包皮口が狭く、包皮を反転できない状態をいう。亀頭と包皮の間に炎症が生じると膿がたまったり、尿道が閉塞して排尿に障害を起こしたりすることもある。嵌頓(かんとん)包茎とは、包皮を反転させて亀頭を露出させた後戻らなくなり、包皮によって陰茎が締め付けられた状態をいう。激しい痛みを伴ったり、ペニスが鬱血して赤紫に腫れ上がったりすることもあり、緊急の処置が必要だ。包皮が元に戻らない場合は、手術が必要になる。
「うちの子、包茎かも」と気になってもなかなか人に尋ねにくい。東京女子医科大学病院泌尿器科の迫田晃子医師は「何もしないこと」と、明言する。