マンガで読み解く現代社会(※写真はイメージ)
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『オタクコミュニスト超絶マンガ評論』などを出版してきた紙屋高雪さんが4月、新たに『マンガの「超」リアリズム』を上梓した。東京堂書店・竹田学さんは、同著の魅力を次のように寄せる。

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 本書は主に「性」「暴力」「戦争」をテーマに『はだしのゲン』からエロマンガまでさまざまなマンガに描かれたリアリティーやイデオロギーを読み解き、現代社会と関連させて批評する。

 著者は社会運動に関わり、サブカルチャー批評も展開する自称「オタクコミュニスト」。マンガが描く性や暴力の快楽に没入し、理想や正義に興奮しながら反戦思想に基づく倫理的・批判的思考も手放さずに作品に向き合い、マンガとの付き合い方を模索する。

 最終章で『神聖喜劇』の主人公・東堂に年甲斐もなく憧れ、個人の尊厳と連帯を称揚し、請願法を利用した文書による行政への働きかけを推奨するくだりは「オタクコミュニスト」の面目躍如だ。マンガの快楽と危うさを考えるリテラシー書であり、読者を社会に対する実践に誘うアジテーション書である。

AERA 2018年5月28日号

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