「アホとの戦いは、時間の無駄」
そう唱えるのは、元政治家であり、現在はシンガポール・リークアンユー政治大学院で教鞭を執る田村耕太郎氏だ。
田村氏はシリーズ80万部突破のベストセラー『頭に来てもアホとは戦うな!』のなかで、アホと向き合う上での処世術を伝えている。今回は、「男の嫉妬」について。同書から一部を抜粋して解説する。
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政界では、「男の嫉妬より怖いものはない」ということも学んだ。政界に入るまで「嫉妬」といえば、女性の専売特許かと思っていたが、数字で勝負がつけにくい、権力好きが集まった男性社会である政界こそ、嫉妬社会の代表であったのだ。
「この社会で最も嫉妬されやすいのは「若さ」だ。若ければチャンスを待てる。待てば嫉妬も緩められる。若くして政治家になった君はそれに気づけ」というようなことを言われたことがある。
それを実感したのは、先輩たちと会食したときである。テレビによく出ているある若手政治家のことが肴になった。「あいつは党や党の重鎮である大物議員の悪口を言うことでメディアに取り上げられている。メディアに利用されているのも知らずに。許せん」。
また別の機会には、ある総理に気に入られ政治家でないのに入閣した民間出身の大臣に対する風当りを感じたこともあった。「ただの口ばっかりの学者じゃないか。党をまとめられると思っているのか?つぶしてやる」と皆が息巻いていた。
当選1回で入閣した女性議員には、「政治の実績や党での雑巾がけが全くないじゃないか。答弁で困っても助けてやらないぜ」という感じで憎しみの対象になっていた。
当時の自民党は野党になることなど想定していなかったので、闘争はもっぱら党内であり、野党との戦いより党内の嫉妬の対象に対する足の引っ張り合いやいじめが激しかった。
そういう国民不在の党内抗争に国民は嫌気がさして自民党を見限り、その後政権交代が起こるのだが、当時はそんな日が来るとは私も思っていなかった。今の自民党はその失敗から学んでいるので、自ら足を乱すことはまだ当分なさそうに思うが。