そんな極道の奥義が詰まったものを、“天然の善意”で子供に歌わせている大人たち。音楽で分からなければ衣服で例えてみよう。もし幼稚園の指定した水着がTバックタイプの物だったりしたらどうだろうか。それをあなたの知らないところで決められ、いたいけな娘が着させられていると想像してみてほしい。

「君は君のままで」とか「自分らしく」とか「そのままの君が好きだから」とか、聞き心地が良いフレーズは人をうっとりとさせるかもしれない。が、それは、“商業音楽”の現場で、一番利便性が高いフレーズでもあるのだ。

 オンリーワン思想とは、実は、一人で生きていかなくてはいけない冷ややかな時代の揺り戻しだ。血縁や地縁に縛られず、自分で名前を自由に決めてよい時代の裏側はとても厳しい。「極甘な自己肯定」を後押ししてくれる時代の暗部、それがキラキラ化現象なのかもしれない。何年後かの評価を待つことにしたい。

 最後に。私の子供の名前が気になるところだろう。

「伊音」

 これで「オト」と読む。

AERA 2018年5月14日号

著者プロフィールを見る
マキタスポーツ

マキタスポーツ

マキタスポーツ/1970年、山梨県生まれ。俳優、著述家、ミュージシャンなど多彩な顔を持つ。子供4人。スポーツ用品店だった実家の屋号を芸名に。著書に『すべてのJ-POPはパクリである。』ほか。映画「苦役列車」でブルーリボン賞新人賞受賞。近刊に『越境芸人』(東京ニュース通信社)。『決定版 一億総ツッコミ時代』(講談社文庫)発売中。

マキタスポーツの記事一覧はこちら
暮らしとモノ班 for promotion
「集中できる環境」整っていますか?子どもの勉強、テレワークにも役立つ環境づくりのコツ