
財務事務次官のセクハラ疑惑は、実態解明が進まないまま、被害者バッシングという いびつな事態も起きている。「私たちも」「一緒に」の声は日本では広がらないのか。
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「#WithYou」。被害者との連帯を示す黒い服を着た参加者たちが、断固たる決意のメッセージを掲げた。
4月23日、衆院議員会館で開かれた緊急集会。福田淳一・前財務事務次官によるセクハラ被害を告発したテレビ朝日の女性記者が不当なバッシングにさらされている状況に、約200人が「許さない」と声を上げた。
「1対1で会って何が悪いんですか。私たちの仕事はそういう仕事なんです」
元全国紙記者でジャーナリストの林美子さんは、集会で記者職への理解を呼び掛けた。
これは、夜中の呼び出しに応じた女性記者にも非がある、との意見がネットなどで飛び交う現状を踏まえたものだ。
記者会見などで発せられる公式見解を伝えるだけでは、報道機関は発表する側の都合のよい情報を画一的に流す形になってしまう。このため男女を問わず記者は、事実を検証するのに必要な情報源となる複数の幹部らと「サシ」で会い、本音の情報を集める努力がルーティン業務として課されている。
ただ、そうした記者の職務につけ入る形でセクハラに及ぶ「取材先」が後を絶たないのが実情だ。林さんはこう訴えた。
「ここで私たちが止めなかったら、この先ずっと、女性記者は耐えろと言われる。今は分水嶺なんです」
一方、弁護士の中野麻美さんは、「この問題はセクハラという人権侵害と、報道の自由の問題がクロスしている」と発言。労働安全衛生法第24条、25条で、労働災害を防止する措置などが事業者に課されている点を挙げ、こう強調した。
「性暴力の危険も労働災害の一つ。その危険を回避するための告発は、広く国民の知る権利に関わる公益通報です」
集会には、複数の野党議員も参加した。だが、こうした被害者に寄り添う動きに逆行する国会議員の発言も相次いでいる。