「赤ちゃんの死」を経験し、もう一度前を向こうとがんばっている人たちへ、私たちは何ができるのか。周囲に死産や新生児死、流産などを経験した人がいるけれど、どんな言葉をかけたらいいかわからないという人もいるだろう。
赤ちゃんを亡くした後に言われたひと言で、家族の関係が壊れてしまうこともある。AERAで連載し、多くの反響を呼んだ「みんなの知らない出産」をまとめた書籍『産声のない天使たち』で紹介した、「傷つく言葉、支える言葉」を紹介する。何気ない一言で大切な誰かを傷つけにようにしたい。
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都内に住む女性は、おなかの子が染色体異常の18トリソミーとわかり、産もうと決めて準備を始めた安定期に入ってすぐの頃、死産した。
遠方に住む実家の両親には、「病気もあったし生まれてこないでよかった」と言われた。さらに死産から3週間ほど経った頃に実家に帰省した際、両親に心配をかけないようにと元気に振る舞っていたら、父親から「知り合いの息子さんに3人目の子どもが生まれたから、 一緒にお祝いに行こう」と誘われた。死産からまもない頃で、 誰かの出産を祝うどころか、赤ちゃんを見ることさえもつらい時期だった。女性は、友人と会う約束があると嘘をついて行かなかった。妊娠中の自分を見ていない両親は、私がどれほどつらく苦しかったのか、理解しづらかったのかもしれないと考えようとした。それでも悲しみや怒りは収まらず、以来、両親とは距離を置き、電話も着信拒否にしている。
その後、不妊治療を経て出産し、ようやく生きている我が子に会えたが、親には伝えていない。
「一緒に悲しんでもくれなかったし、死んだ子の供養もしてくれなかった両親に、もし今回の出産を喜ばれたら嫌悪感を抱いてしまうと思う」
悪気なく、むしろ良かれと思って励ました言葉に傷ついてしまうこともある。せめて不用意な言葉で傷つけないよう、今回取材で話を聞いたみなさんの体験から、どんな言葉に傷つけられたのかまとめてみた。受け止め方には個人差もあるし、死別後は心が不安定なので、同じ人でもそのときどきの心身の状態で受け止め方が変わってくることも書き添えておきたい。