ディズニーランドでのこと。レストランで夫婦2人分の食事に、お子様セットを注文し、テーブルの上に希望くんの写真立てを置いて食事をしていたら、女性の従業員が優しい声でこう言った。
「3人で写真を撮りましょう」
希望くんの存在を認めてもらった気がして本当にうれしかった。
ハワイ旅行に出かけたときに日本航空を利用したときには、離陸しようとする機内で、礼子さんは希望くんの写真を握りしめながら、一緒に連れてきてあげられなかったと、涙がこみあげてきた。
しばらくして、1人の客室乗務員が席にきて、「失礼ですけど、ちょっとお話、いいですか」と話しかけてきた。礼子さんが「子どもが亡くなったんです」と明かすと、その客室乗務員は涙を流して聞いてくれた。
翌朝、目を覚ますと、機内にあるありったけのおもちゃを集めたのではないかと思えるほどたくさんのおもちゃと、ポストカードに乗務員一同から一言ずつメッセージが書かれた寄せ書きが置かれていた。朝食のときには、 夫婦の分のほかに、「お子さまの分です」と、子どもの離乳食も運ばれてきて、子ども用にと、ふたとストローがついたジュースも出してくれた。帰りの飛行機でも、 乗務員は入れ替わっていたがきちんと伝わっていたようで、行きと同じように“3人”としてサービスしてもらったという。
ハワイのホテルでは、枕元に希望くんの写真を置いたまま出かけたことがあり、戻ってきたらホテルのスタッフから「お子さんですか」と尋ねられた。礼子さんが「そうです。亡くなったんです」と答えると、次の日、たくさんのお花が写真の前に置かれていた。礼子さんは言う。
「3人で旅行ができ、思い出が増えたことが本当にうれしかったです。人の温かさに触れて、これまで自分たちの隣や後ろにそういう人がいたことがあったかもしれない、と思うとハッとしました。世の中にはいろんな事情の人がいる。自分たちもそういう人に寄り添えるようになりたい、と思っています」
子どもを亡くした人に手を差し伸べることができるのは、身近な人だけではない。誰もが、優しい想像力を持つことで、誰かの悲しみをほぐすことができる。