都内の公立小学校がイタリアの高級ブランド「アルマーニ」がデザインした制服を導入し批判された。他方、都立高校でも制服化の波が押し寄せている。ここ十数年で、私服だった20校近くが制服や標準服を導入。なかには、有名百貨店でのイージーオーダーという学校もある。
「親は既製服しか持たないのにと驚いた。制服のほうが経済的という声もあるけれど、今は安価なファストファッションはいくらでもある」と、1980年代に都立高校で私服ライフを楽しんだ50代の母親は憤る。
東京都教育委員会によると、都立高校186校(島しょ部を含む)のうち全日制・普通科では私服校が10、式典時の着用が定められている標準服校が9校ある。
都内に住む50代の女性公務員は、次男(20)が卒業した都立私服校が昨年「髪染め禁止」になったと聞き心がざわついた。当時の校長が入学式で、「この学校には校則はありません。校則がないことをかみしめて3年間過ごしてほしい」といった趣旨のことを語り、他の父母と「さすが生徒の自主・自立を掲げた学校だね」と喜び合った。
学校の自由な雰囲気が好きだった。体育祭や文化祭ではクラスカラーに髪を染め盛り上がる。だが、部活動の大会や沖縄への修学旅行に行くまでには全員黒に戻した。「(沖縄の)ガマと呼ばれる防空壕に入るとき、戦死者に失礼にならないか」と教師に問われたと聞いた。
「自由を手に入れることは責任を果たすことだと自然に学ぶ。私服で過ごす意味は大きい。校則を増やして制服に移行しようとしているのでは」と心配する。
長女(18)がこの春、私服の都立高校を卒業した40代の男性会社員は、「娘が在学中、新しく赴任された校長先生がいきなり制服化委員会みたいなものを立ち上げて、対応が大変だったと妻から聞いた。進学実績は順調にアップしている学校なのに」と首をかしげる。
一部とはいえ、都立高校はなぜ制服化しているのだろうか。
東京大学大学院教育学研究科教授の小国(こくに)喜弘さんは「日本社会の保守化と関係している」と感じている。
「よく見れば、高偏差値のトップ校は私服で、偏差値中位の学校がどんどん制服になっている印象はぬぐえない。どの学校も管理強化に向かっているのではないか。それを保護者も歓迎する。労働組合が弱くなるなか、雇用の保障がされない状況で親のほうも保守化が進んでいるからだろう」