23日に投開票された世田谷区議選で、わずか1票差で当落が決まるという珍しい事態が起きた。まさに「1票の重み」を体現する結果となったが、当落線上にいた候補者たちは「1票の差」に何を思うのか。落選した候補、当選した候補それぞれに思いを聞いた。
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世田谷区議選は議員定数50に対し、75人が出馬した。50番目ギリギリに滑り込んで当選したのは、現職の大庭正明氏(66=諸派)。得票数は3621票だった。次点で落選したのは、元区議で返り咲きを目指した三井美穂子氏(60=無所属)。得票数は3620票で、わずか1票差で落選となった。
三井氏は、得票数が確定したときに「えっ!て。目が点になりました」と振り返る。
落選が確定した後、支えてくれた人たちから次々におわびの電話やメールが届いた。
「もっと周りに声をかけておけばよかった」
「(当選は)大丈夫だと思ってしまった」という後悔を、それぞれがにじませていた。
「逆に、皆さまに申し訳ないと感じています。私にもっと力があれば、そんなことを言わせることもありませんでしたから……」
三井氏は、目を赤くして言葉をつないだ。
一方、当選した大庭氏は、「当選と落選では天と地ほどの差がありますが、私の手の上に、どなたかからいただいた一枚の投票用紙が乗っているという感覚でしょうか」と率直な心境を口にする。
そして「これまでやってきたことへの評価をいただくのが選挙。世田谷に限らず、区議選では、わずかな得票数で当落が分かれることも珍しくありませんし、当落の線引きはどこかでしなくてはなりません。受験だって、1点で合否が分かれますよね」としつつ、「私と妻の2票が、ということでもあります。この票差を何と言っていいのか」と複雑な思いも明かした。
わずかな票差で当落が決まった過去の選挙では、落選者から“異議申し立て”が行われたことがある。
公職選挙法では、地方公共団体の選挙で、選挙人もしくは候補者が当選の効力に不服がある場合は、当選者が確定した日から14日以内に地方公共団体の選挙管理委員会に異議を申し出ることができる。その決定についても不服がある場合は、都道府県の選管に審査を申し立てることができる。