内閣人事局で幹部人事を握った「安倍一強」体制によって、官邸の力がさらに増した。意見を言えず、官邸の顔色ばかりをうかがう霞が関の現状を示す一例が、安倍政権が打ち出した働き方改革につながる「プレミアムフライデー」だろう。もはや懐かしい感もあるが、月末の金曜日に早帰りなどをして豊かな時間を過ごそう、という取り組みだ。旗振り役を務める経済産業省の関係者が話す。

「省内でも実現性や効果について懐疑的な声ばかりだった。上からの指示はやるしかないが、大臣をはじめ、誰も意見を出して止められなかったのかと、情けなくなる」

 プレミアムフライデー導入から1年が経つが、実際にいつもより早く帰れた人は1割程度(プレミアムフライデー推進協議会)で、国民生活にとってプラスになったとは言いづらい。

 同じく国民生活に近い政策で「忖度」がはびこっていると、元ベテラン政策秘書は語る。

「これまで厚生労働省の幹部が恐れていたのはOB官僚と現役大臣、そして大臣経験者などの厚労族でした。この3者を納得させ、結果を出すことで出世ができた。ところが内閣人事局の創設以降、幹部官僚は大臣の代わりに官房長官をはじめ官邸の顔色をうかがうようになった。ついには率先して『社会保障の抑制』を言い出す者まで出てきている。かつての厚労官僚では考えられない」

 そんな話は山とある。霞が関では「忖度」を通り越して、「絶望感」すら見えた。

「世襲議員ばかり。役人を守る気などない」(国土交通省)
「出世すれば、前川さんみたいに私生活まで監視される。出世意欲はなくなった」(文科省)
「政治の緊張感を取り戻すには、強い野党が必要。安倍一強を支えているのは野党だ」(厚労省)
「安全保障法制で内閣法制局長官の首をすげかえたとき、何か底が抜けたような気がした」(農林水産省)

(編集部・澤田晃宏)

AERA  2018年4月30日-5月7日合併号より抜粋

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