たけもと・おりたゆう/1975年生まれ。第28回咲くやこの花賞、第34回松尾芸能賞新人賞、平成25年度大阪文化祭賞グランプリ受賞(撮影/写真部・小原雄輝)
たけもと・おりたゆう/1975年生まれ。第28回咲くやこの花賞、第34回松尾芸能賞新人賞、平成25年度大阪文化祭賞グランプリ受賞(撮影/写真部・小原雄輝)

 『文楽のすゝめ』は近松門左衛門の名作解説から、文楽で大阪を楽しむ「ぶらあるきガイド」まで。初心者から楽しめる一冊だ。著者である竹本織太夫さんに、同著誕生の背景にはどのようなストーリーがあったのか、話を聞いた。

*  *  *

「文楽は大阪で生まれた庶民の芸能だったのに、いつの間にか芸術として神棚に上げられているように思います。私は文楽の『敷居を下げる』のではなく、ぼたのようにお客さまが手に取りやすいようにして『神棚からちゃぶ台に、文楽を戻したい』んです」

 そう語るのは文楽太夫・竹本織太夫さん。文楽は物語を語る太夫と三味線、そして三人遣いの人形で作り上げる世界的にも例がない芸能だ。2008年にはユネスコの無形文化遺産にも登録されている。

 織太夫さんは豊竹咲甫太夫として活躍してきたが、今年、八代目竹本綱太夫(四代目竹本織太夫)の五十回忌追善公演で六代目を襲名。名実ともに文楽の次世代を担う存在となった。

「04年に、『豊竹咲甫大夫と文楽へ行こう』を出したときは、まだ29歳。自分も若く、とても芸を語れる立場ではなかったので、『超』入門書として本を書きました。その後、精進を重ねるなかで、アイデアが増えてきた。襲名の機会に、『入門書』を出したい、と思ったんです」

「江戸時代のトレンディドラマ」「愛すべきダメ男図鑑」など、本書には現代的なフレーズが並ぶ。江戸時代の貨幣制度や社会を紹介する「観劇に役立つ江戸時代の常識」という項目も。

次のページ