中高年になると変形性膝関節症が急増する。関節の変形が進めば、手術が必要になることも。人工関節の性能向上で50代から人工膝関節置換術を受ける人も増えているという。手術の方法やメリットなどについて専門医に聞いた。
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50代以上の中高年になると変形性膝関節症によるひざの痛みで困る人が増加する。変形性膝関節症は加齢によってひざの関節軟骨がすり減り、進行すると骨も変形していく病気だ。とくに女性の割合が高い。治療はまず、減量・筋力トレーニング・柔軟体操を基本に湿布薬や鎮痛薬、関節注射などによる保存療法がおこなわれる。高槻病院関節センターセンター長の平中崇文医師はこう話す。
「3~6カ月ほど保存療法を実施して痛みが改善するケースが大半です。1年程度保存療法を試みても痛みがとれず、変形も強まって生活に不便を感じるようなら手術を考えてもいいでしょう」
手術をおこなうかどうかの見極めについて、帝京大学病院スポーツ外傷・関節鏡センターセンター長・整形外科教授の中川匠医師もこう話す。
「日本人はもともとO脚気味の方が多いのですが、変形が進むとひざがまっすぐに伸びず、O脚が明らかになり歩行が困難になってきます。片脚立ちでバランスがとれなくなってきたら手術を検討してもいいかもしれません」
■人工関節の耐久性 20年以上問題なし
変形性膝関節症の手術には関節鏡視下手術のほか、骨切り術と人工膝関節置換術がある。関節鏡視下手術は半月板損傷などによる痛みがあるケースにおこなわれ、傷口が小さく低侵襲な手術だ。骨切り術とは、脛骨や大腿骨の一部を切り矯正することでひざの重心位置を変え、痛みを改善する関節温存手術だ。変形が大きくなく関節機能が残っているケースに限るが、術後の運動制限がなく、50~60代前半の活動度の高い人向けの手術だ。
人工膝関節置換術には「人工膝関節全置換術(TKA)」と「人工膝関節単顆置換術(UKA)」がある。関節の変形が進み、痛みが強い場合には膝関節をすべて人工関節に置換するTKAがおこなわれる。O脚で関節の内側だけが変形しているという場合には傷んだ部位だけを人工関節に入れ替えるUKAが可能になる。