「UKAは関節の内側または外側しか骨を切らないため手術時間も短く、十字靱帯も温存できます。術後の痛みも少なく、復帰も早い。手術を決心できずにいた人でも心理的ハードルが下がるようです」(平中医師)
ただし、UKAは比較的難易度の高い手術であり、実施している病院も多くない。UKAが可能な症例でも医師の考え方によってはTKAを薦められる場合もある。
現在、人工膝関節置換術で実施される手術の約9割はTKAだ。安定した治療成績が出ていて、痛みの改善に効果的な治療だ。リハビリを含めて術後2週間程度で退院できるケースが多い。術後のひざの曲がり具合も正座以外は可能で、ゴルフや野球、水泳などの適度なスポーツは可能だ。
ただし、TKAは人工関節の耐用年数が約20年とも考えられてきたため、おもに60代以降が対象とされてきた。それが近年、50代でも手術をするケースも増えている。
「60歳まで手術を待つ間に、たとえば旅行やスポーツなど『本来なら享受できたはずの経験』を失う可能性もある。それなら早めに手術を受けて、痛みのない自由に動ける生活を手に入れたほうがいいという考え方もあります」(同)
人工関節に緩みなどの不具合が出てきた場合は再置換術になるが、すでに術後20年経った人たちの8割が問題なく生活できているというデータもある。人工関節の性能、設置技術の革新が目覚ましい昨今では、将来的にこの耐用年数がさらに延びる可能性もあるという。
変形性膝関節症の痛みは両ひざに出ることも多いため、両ひざ同時手術に積極的な病院もある。
「せっかく手術を決心したのだから両ひざを一気に治したいという人も多い。当院は4割が両ひざ同時です。入院期間も片ひざの場合と変わらず約2週間です」(同)
■ロボット支援で安全で正確な手術
人工膝関節の手術では、コンピューターナビゲーションを取り入れる病院も増えている。赤外線を使用して膝関節と手術器具の位置関係を計測し、リアルタイムにモニター表示する。まさに車のナビゲーションのように術前計画どおりに進んでいるかを確認しながら安全に正確な手術ができる。