帰国後は文字通り、郷土の英雄に。成田空港でも女満別空港でも、多くの人々が出迎えた (c)朝日新聞社
帰国後は文字通り、郷土の英雄に。成田空港でも女満別空港でも、多くの人々が出迎えた (c)朝日新聞社

 平昌五輪で銅メダルを獲得し、注目度が急上昇した女子カーリング・LS北見。彼女たちの勝利の裏には、コーチや主将の支えや、徹底したコミュニケーションがあった。

【写真】ユニフォーム姿も可愛い!神スマイルを見せたカーリング女子の選手たち

 五輪シーズンを迎えるにあたり、LS北見は四つのテーマを掲げていた。

(1)Stay positive with a smile(笑顔で前向きに)
(2)Consistent communication(コミュニケーションを途切らせない)
(3)Move together(ともに動こう)
(4)Smart aggressive(賢く積極的に)

 すべて英語なのは、カナダ人コーチのJ.D.リンド(33)が選手たちに授けた言葉だからだ。ナショナルコーチとしてチームに関わって3年。選手たちは彼に全幅の信頼を置く。鈴木や吉田姉妹を中学時代から見てきたチームコーチの小野寺亮二(57)は、リンドと初めて会ったその日に、「この人の知識はすごい」と指導一任を決めて、自身は裏方に回った。

 リンドは、カナダのトップチームが使っていた石の速度を測る練習機材を持ち込んだり、他国の戦術の傾向を伝えたり、チームに世界の第一線の知見をもたらした。相手の良さを認め、受け入れ、それを前進するための力にする。「そだね」の相づちにも通じる「肯定力」がチームの根底にあった。

 これはチーム創設者の本橋麻里(31)が大事にしてきた思いでもある。平昌五輪では主将ながら控えに回った本橋が言う。

「押しつけるってことをしたくない。それぞれのキャラクターを大事にして、5人5色、何色も重なったチームにしたい」

 本橋には、忘れられない場面がある。チーム青森として出場した2010年のバンクーバー五輪。選手村で家族と楽しそうに食事をする他の国の選手たちの姿だ。彼女たちは氷上でも笑顔。余裕があるように見えた。

 バンクーバーでの本橋は重圧に苦しみ、試合中もそれ以外も、常に不機嫌だった。仲間とのコミュニケーションも減っていた。ライバルたちの笑顔を見た瞬間、

「あぁ、かなわないな」

 と感じたという。実際、チーム青森は8位に終わった。

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