やる気のコントロール? そんなことできるの?とお思いでしょうか。青学陸上競技部やラグビー日本代表も、これを使っているんです。
脳科学的な「やる気」は、「ある行動をとろうとするときに、その行動の先に快感(いい気分)が予測されること」。この行動と快感を結びつける働きをするのが、左右の大脳半球の奥にある「線条体」という神経核だという。コーチが選手のやる気を引き出すためには、努力の程度や方向性、取り組んでいること自体をほめることで、やる気を引き出すことができるという。自己肯定感の低い日本の若者には合ったやり方と言えそうだ。
こうした若者気質の変化に添った指導でやる気を引き出しているのが、今年の箱根駅伝で4連覇を遂げた青山学院大学陸上競技部だろう。原晋監督(51)が「ワクワク大作戦」と名付けたレースで初優勝。
「萎縮させず、寛容になる」
「コミュニケーションを一方通行にしない」
「具体的な指示を出し過ぎず、選手の自主性を尊重する」
といった方法で、快進撃を続けている。
『「すぐにやる脳」に変わる37の習慣』の著書がある脳科学者の篠原菊紀さんは言う。
「いいことが起きそうだというワクワク感があることをやる気と呼ぶわけで、怒鳴られたらいい気分にはならない。その意味では、『アメとムチ』も意欲の喚起にはつながりません。アメという報酬はすぐに慣れて効かなくなるし、ムチは禁止行動を徹底するのには役に立ちますが、促進するのには向きません」
メンタルコーチとしてエディー・ジョーンズ氏率いるラグビー日本代表を支えた園田学園女子大学人間健康学部教授の荒木香織さん。彼女も、プロセスを重視すべきだという篠原さんと同意見だ。
「練習では100%の力で取り組めたか。試合ではそのときの100%の力を出しきれたか。指導者がその過程に着目しなければ、成果も得られません」
スポーツ心理学では、「目標を持つより企画書を持て」と言われる。出すべき結果を「目標」として設定しがちだが、それより、何かを達成するための企画を考え、それを実行していくほうがやりがいもアップする。