そんな濱田が得意なのが「視覚障害者あるある」と「盲学校あるある」ネタだ。今回のR-1でも披露した。

「盲学校の生徒って全員目悪いんです。教室に黒板あったんです。いや、見えへんて!」

「修学旅行で北海道に行くってなって、全員目悪いのに、その生徒に向かって先生が『札幌ドームにプロ野球を見に行きます!』って。えー!!」

 笑える、面白い。このリズム感のいいボケと突っ込みで、会場を沸かした。本人いわく、「楽しみながらできたらいいなと思っています」。

 先天的に視覚障害を持つ濱田は、客が笑う姿を映像として捉えることができない。「受けた」かどうかは「耳」だけが頼りだ。

 例えば、自分の一つ前に出た芸人と一つ後に出た芸人とを比べて自分はどうだったかを比較する。拍手が大きかったら「受けた」、小さかったら「受けなかった」と思うのだという。

 障害をネタにした笑いはタブー視されがちだ。だが、濱田は「タブー」と感じたことはないと話す。

「受け取る人によってとらえ方は違うとは思うのですが、僕は別にタブーと思ったことはないですね。両方の意見があって当然なので」

 お笑いの舞台は濱田にとって、自分が障害者であることのハンディを忘れさせてくれる場所なのかもしれない。普段の生活では、買い物や電車に乗ったりする時などハンディを感じることは多い。だが舞台ではハンディを感じることはないと言う。

「自分がおもしろいと思うものを信じてやるだけですから」

 気負いはない。ただ、浮き沈みが激しいお笑いの世界だ。劇場メンバーから落ちないように頑張らなければと話す。好きな食べ物は「米」、好きな言葉を聞くとこう切り返した。

「視覚障がいに縛られているのに、何でこれ以上、特定の言葉に縛られないといけないの(笑)」

 まだ28歳。これから、“しゃべり”でお笑い界に躍り出る。(AERA編集部・野村昌二)

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