A級順位戦初参戦の豊島将之八段。藤井聡太六段ら下の世代の猛追を抑えて「豊島時代」を築けるか (c)朝日新聞社
A級順位戦初参戦の豊島将之八段。藤井聡太六段ら下の世代の猛追を抑えて「豊島時代」を築けるか (c)朝日新聞社
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 最近の将棋界は起こりえないことが起こる──。中学生棋士・藤井聡太六段(15)の29連勝や「永世七冠」を達成した羽生善治竜王(47)とのビッグマッチでの勝利、短期間での六段昇段など、この1年の間に世間の注目を集める出来事が次々と起きている。3月2日にあった第76期将棋名人戦・A級順位戦の最終戦もそうだ。

 佐藤天彦名人(30)への挑戦権を争うトップ棋士11人によるリーグ戦は、最終戦の結果、6人が6勝4敗で並び、史上初の6者プレーオフが行われることになった。これまでは4人が最多で、6人は前代未聞。その最大の要因は豊島将之八段(27)の「快進撃」と「失速」だが、開幕から羽生や前期挑戦者の稲葉陽八段(29)らを破っての5連勝は目を見張るものがあった。

 現在A級最年少の豊島は今期初参戦。16歳でプロ入り後、早くから頭角を現し、稲葉らとともに「関西若手四天王」と称された。タイトル獲得経験こそないものの完成度の高い棋風で高勝率を誇る。2014年に将棋ソフトと対戦したのをきっかけに、棋士との練習将棋をやめ、将棋ソフトと対局する勉強方法に切り替えたという合理的な一面を持つ。

 勢いからすれば豊島がすんなり挑戦者になってもおかしくなかったが、プレーオフという結果はむしろ世代交代の流れにあらがう既存のA級棋士たちが頑張った結果といえるだろう。

 この15年は、羽生と同年代のトップ棋士たち、いわゆる「羽生世代」がA級(通常は定員10人)の半分を占め、名人戦も同じ世代同士の戦いが多かった。特に名人位は02年から15年まで羽生と森内俊之九段(47)が分け合うという寡占状態だった。

 その状況に陰りが見え始めたのはここ数年のこと。A級の常連だった藤井猛九段(47)、丸山忠久九段(47)、郷田真隆九段(46)が去り、前期は森内が降級した。残っているのは羽生と佐藤康光九段(48)だけだ。

 一方で若手の台頭が著しい。2期前にA級に上がったばかりの佐藤天彦がいきなり挑戦者になり、羽生を破って名人を奪取した。前期は稲葉が初参加で挑戦者になった(結果は佐藤名人の防衛)。来期は元竜王の糸谷哲郎八段(29)がA級に上がる。

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