パラサポは、子どもたちへの教育やイベントなどを通じたパラスポーツの普及活動、人材育成などで競技団体を支援している組織。稲垣、草なぎ、香取の3人は17年11月15日、パラサポのスペシャルサポーターに就任していた。
パラサポ推進戦略部の前田有香さんは言う。
「生でパフォーマンスを見れば選手のすごさが伝わると思うので、まずは試合を見て、パラスポーツを知って、ファンになってほしい」
平昌で熱戦が続く、冬季競技でも同じこと。例えば、アルペンスキーは、立って滑る立位、チェアスキーに座って滑る座位、ガイドのサポートを受けて滑る視覚障害の三つに分かれて5種目が実施され、障害の程度に応じて設定された係数をかけた計算タイムで順位が決まる。
日本選手の出場はないものの、前を走るガイドの声や音だけを頼りに、急斜面を時速100キロを超えるスピードで滑り降りる視覚障害種目は見応え十分。
チェアスキーに乗って行う座位種目では、実は日本は強豪国の一角を占める。長野大会を契機に国内でチェアスキーの開発が進み、今では海外選手も含めて出場選手の7割が日本製のチェアスキーを使う。時速130キロは出るという。
男子では、バンクーバー大会の滑降で銀、スーパー大回転で銅、ソチ大会のスーパー大回転で銀のチェアスキーヤー・森井大輝(37)には金メダルの期待がかかる。他に、狩野亮(31)、鈴木猛史(29)、女子の村岡桃佳(21)がメダル圏内。いずれもその世界ではスター選手だが、知名度はまだまだ。
そもそも、チェアスキーができるスキー場自体が少ない。前出のパラサポ前田さんは言う。
「選手のみでチェアスキーの練習ができるスキー場は、全国で3カ所ほど。競技人口がなかなか増えないのが課題です」
もちろんこれは、冬季競技に限らず、夏季競技も含めたパラスポーツ全般に言えることだ。
「パラスポーツについては、どこでその競技を楽しめるか、などの基本的な情報もまだ少ない。制限の多い練習環境の中で、人材発掘も難しい状況です」(前田さん)
前出のパラ駅伝開会式で、小池百合子都知事は20年東京大会の準備を加速させていると話し、
「パラリンピックの成功なくして東京大会の成功はない」
と改めて明言した。
稲垣、草なぎ、香取の3人は、フィナーレのスペシャルライブで新曲「雨あがりのステップ」を披露。3月19日から「iTunes」のみで販売し、6月30日までの売り上げ全額をパラスポーツの支援のために寄付すると発表した。
「曲だったり、足を運んで応援してみたり、ちょっとしたことでもできることがあればやっていきたいと思いますね」
と草なぎは言う。
20年東京大会は、もうすぐそこだ。各競技や選手たちの知名度を高めるためにも、競技環境を整備するためにも、まだまだ強力なサポートが必要だ。(文中一部敬称略)(編集部・柳堀栄子)
※AERA 2018年3月19日号