大杉さんは10年ほどの前にタバコをやめたと言われているが、「それまで40年以上も吸い続けていたら10年やめたところで、血管は喫煙前の状態には戻らない」(同)という。

 動脈硬化はさまざまなリスクの蓄積だ。高血圧症などが解消されなければ、発生リスクは変わらない。むしろ、ストレスや不規則な生活といった、その他の因子が重なれば、倍々ゲームで発症リスクは高くなる。

 実際、42歳で亡くなった上司は、タバコも酒もやらなかったという。ただ、偏食家だった。

「夜遅くまで働くのに、あまり食事を取らず、大量のサプリメントを飲んでいました。奥さんが手料理をつくって待ってるんじゃないですか?って言っても、『栄養は十分。健康診断も正常だ』と言い張り続けていた」(事務職女性)

 実は、このような自己満足的な健康療法がもっとも突然死のリスクを抱えているという。

「急性心筋梗塞には狭心痛(血管の閉塞等によって心臓が酸素不足に陥って生じる痛み)などの予兆がありますが、一時的な症状にすぎないと放置して冠動脈が詰まってしまうと病気が進行していきます。解離性大動脈瘤は破裂するまで、自覚症状がないケースが大半です。おそらく高血圧などの症状はあったはずですが、体に変調をきたしていない状態では、ほとんどの人が医師にかかることを嫌がり、その結果、深刻な事態を招いてしまいがちなのです」(米山氏)

 高血圧症患者の多くは、一度薬を処方されて、血圧が下がると途端に通院が億劫になりがちだ。「馬鹿正直に、通院し続ける患者が最も長生きする」(同)という。なお、急性心筋梗塞や解離性大動脈瘤を発症した場合には、時間との勝負。先の4大因子が該当する人は、自宅近くの救急病院をチェックしておき、不測の事態には駆け込めるようにしておくのが得策だ。(ジャーナリスト・田茂井治)

AERA 2018年3月12日号

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