俳優の大杉漣さん(享年66)が亡くなったのは、体調不良を訴えてから4時間後のことだったという。突然死はどのようにして起こるのか。第一線の専門医に聞いた。
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「ちょうど大杉漣さんが亡くなる2週間前に、会社の先輩が突然死しました。仕事が遅くなって23時頃に帰宅した奥さんが発見したときには、冷たくなっていたようです……」
こう話すのは突如、上司を失った中小メーカーで働く事務職の女性だ。その上司は大杉さんのちょうど2回り下の42歳。いまだ働き盛りの男性の命を奪った病気は「解離性大動脈瘤」だった。
大杉さんは体調の異変から約4時間後、急性心不全で亡くなったと報じられているが、解離性大動脈瘤も同じく心不全を引き起こす病だ。米山医院の米山公啓院長(神経内科医)は次のように話す。
「急性心不全は何らかの理由で心臓が動かなくなってしまった現象にすぎず、それを引き起こした病気は別にある。腹痛を訴えてタクシーで病院に駆け込んだことを考えると、急性心筋梗塞か解離性大動脈瘤破裂の可能性が高い」
「心筋」は文字通り、全身に血液を送る心臓の筋肉。心臓の表面を冠状に覆っている冠動脈が詰まると、心筋梗塞が起こる。
「心臓の異常を脳に伝える神経は胃や肩、喉などの神経と束になっているため、放散痛といって腹痛や歯痛、肩の痛みなどを起こすことがある」(米山氏)
一方で、解離性大動脈瘤は血液を送り出す大動脈の壁に亀裂が生じて中膜内に血液が流入した結果、大動脈が2層に乖離してしまう病気だ。放置して血管が破裂すると大出血を起こす。実際、前述の上司は「吐血してうつ伏せの状態で亡くなっていた」(事務職女性)という。
これらの突然死を招く病気には共通する原因がある。
「高血圧や脂質異常、糖尿病、タバコ・酒などの過剰摂取という“4大因子”や加齢から来る動脈硬化がそもそも原因。文字通り、血管の壁が硬くなる現象で、さらに進むとその壁に瘤(プラーク)ができ、その瘤の薄皮が破れると血栓となって血管を詰まらせる」(米山氏)