「これだけバラエティーに富んだジャンルがあるレーベルをこういう形で本にしたというのはかなり珍しいことだと思います。コバルト文庫はこれからも変わっていくものだと思うし、総括はできないです。むしろこの本を少女文化の研究のための資料にしていただければと思います」

 佐藤愛子をはじめとする作家のインタビューやエッセーの再録、お祝いコメント、カラーページに並ぶ懐かしい表紙たちなど、華やかで盛りだくさんの内容。そして、本書の後半はコバルト文庫全部リストに費やされている。40年約4500冊の歴史がそこにある。

「リストを作るのは本当に大変でした。最初のほうは完全にデータ化されていないので現物にあたるしかありません。幸い、コバルト編集部に通しナンバーがついた形でほとんど全部そろっていたので、そこから一冊ずつ全部突き合わせをして検証しました」

 烏兎沼さんは15年には『りぼんの付録全部カタログ』を出版。編集者としても多くの「全集」の出版を手がけている。「全」にこだわるのは、歴史はベストセラーだけが作ってきたのではなく、書き遺されたすべての作品の集合体の軌跡だからだ。

「コバルト文庫の作家・イラストレーターの皆さんが本になることを本当に喜んで、快く協力してくださいました。元読者の方たちからも、『ずらっと並んだ表紙の写真を眺めているだけで、少女時代の心の宝箱のフタが開いた』とうれしい感想が届いています」(ライター・濱野奈美子)

AERA 2018年3月5日号

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