冒頭の女性はその後、キャリアカウンセラーの資格を取り、就職活動を繰り返し、いくつかの事務職を経て、35歳で嘱託のキャリアカウンセラーとして採用された。はじめて「人並み」の給与を得たが、すでに関係が冷え込んでいた家族と絶縁、一人暮らしになった。先行きの不安が付きまとい、嘱託の仕事は事業終了により1年半で終了。卵子の老化が話題になるなか、焦って始めた婚活にも手応えはなかった。

「頑張っても長く働けるところは見つからない。家族も持てそうにないし、私は何者にもなれない」。死にたいと思うようになり、電車に飛び込もうと駅に向かったこともある。38歳の誕生日には、心配した知人が通報し、自宅に警察がやってきた──。

 現在、女性は結婚し、人材関連会社の契約社員として働いている。就労環境は決してよくない。新卒から10以上の職を転々としたが、一度も正社員になったことはない。勤め先で一定の成果を上げても、「正社員」という名の門は、彼女の前には開いていない。

 総務省統計局の労働力調査によると、現在、役員を除く雇用者5486万人のうち、非正規雇用者は2050万人。そこには半数近くの主婦パートを含むが、労働者の4割が非正規雇用と言われる。非正規雇用を選ぶ理由として、「正規の職員・従業員の仕事がないから」は、「自分の都合のよい時間に働きたい」28.6%に次いで、14.4%。こうした「不本意非正規」は全年齢で315万人おり、25~34歳で71万人、35~44歳で67万人、45~54歳で62万人とされる。(編集部・澤志保)

AERA 2018年2月26日号より抜粋