いま、彼らのような優秀な若手人材が、銀行から転職マーケットに流出している。それは銀行が守ってきた日本型雇用システムが制度疲労を起こしている表れ──。そう指摘するのは、元「リクナビNEXT」編集長で、現在ミドル世代の転職を支援するルーセントドアーズ社長、黒田真行さんだ。

「銀行は終身雇用・年功序列という典型的な日本型雇用モデルをかたくなに守ってきた。山一証券や北海道拓殖銀行が破綻した1997年の金融危機から20年間を経ても、雇用維持のために非効率を放置し、構造転換を怠ってきた」

 とみる。

 超低金利による収益悪化、フィンテックの台頭による銀行業務の代替といった事態を受け、メガバンク3行は昨年、ようやく大規模なリストラ計画を発表した。不良債権処理で赤字決算を強いられた2000年代初頭以来のことだ。しかし、内部の行員たちに対しては「バブル世代の退職や新卒採用の抑制などの『自然減』の範囲内なので、安心して働いて」という説明がされている。これに対し、黒田さんは言う。

「それは、20年かけてたまってきたエネルギーがプレートの境界で反発寸前なのに、『とりあえず明日、地震は来ない』と言っているようなもの。転職マーケットは早晩、動きだします」

 支店の統廃合を進めれば、支店長などのポストの減少は避けられない。銀行は50歳近くになったら子会社や取引先に出向・転籍することを慣行にしてきたが、黒田さんいわく、

「残念ながら、銀行出身の余剰人員をもろ手を挙げて歓迎してくれる会社は極めて少ない。銀行が守ってきたこの出向・転籍という人員循環システム自体、崩壊しつつあるのではないでしょうか」

(編集部・石臥薫子)

AERA 2018年1月22日号より抜粋

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