ぐっちーさん/1960年東京生まれ。モルガン・スタンレーなどを経て、投資会社でM&Aなどを手がける。本連載を加筆・再構成した『ぐっちーさんの政府も日銀も知らない経済復活の条件』が発売中
ぐっちーさん/1960年東京生まれ。モルガン・スタンレーなどを経て、投資会社でM&Aなどを手がける。本連載を加筆・再構成した『ぐっちーさんの政府も日銀も知らない経済復活の条件』が発売中
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(c)朝日新聞社
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 経済専門家のぐっちーさんが「AERA」で連載する「ここだけの話」をお届けします。モルガン・スタンレーなどを経て、現在は投資会社でM&Aなどを手がけるぐっちーさんが、日々の経済ニュースを鋭く分析します。

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 昨年末から「本源的価値」とは何か、という話をして参りました。AERAの読者世代の30、40代においては、「では私が最も投資をするべき価値のあるもの(本源的価値)とは何ですか」という話になります。同時に、老後の年金もあてにならないし、株などに投資をして老後資金を増やさねば……という矮小な議論に至る人が大勢だということも最近よくわかってきました。

 結論から言いますと、そういう皆様は人生における本源的価値を完全に見誤っています。これは、何度も書いていますが、皆様が今保有する資産を円グラフにしてみてください。多くの読者は会社から給料をもらっており、給料をもらっている対象=皆様自身という人的資本が資産価値の最大の比率を占め、円グラフが真っ黒になるくらい自分という人的資本に資産が集中していることになります。
 
 40代のサラリーマンで1億円の現金を保有している方が仮にいたとしても、この低金利の世の中で人より1%余計に稼いだとして(そんな金融商品は基本的に存在しません)月にならせばわずか8万円を増やせるかどうか、という話を真剣に考えるのは相当効率が悪い。あなたという資産の本源的価値=あなた自身が最大のポートフォリオなのですからそれをいかに増やすか、こそが重要な問題だというのは明らかでしょう。

 私は1960年生まれ、還暦寸前です。今の私にとっての最大の資産は海外を含めた人的ネットワークです。お金にしても、時間にしても、45歳でサラリーマンを引退する前から自分にとっての最大の投資先は金融商品でもなく、自分自身でした。その結果、海外で事業展開したり、AERAなどで記事を書いたりする際の確かな情報源になり得る「信頼できる国際人的ネットワーク」というべきものが現在の私にとっての最大の価値創出(稼ぎ)の源泉となっています。このネットワークを誰かが欲しいと言っても、100億円出したって買えません。彼らが私という人間と時間を費やすことに本源的価値を見いだしているからこそ私と一緒にいるわけで、それこそ人工知能(AI)が取って代われないものなのです。

 最大の資産はあなたという人的資本であり、その本源的価値を最大化することが人生の最重要課題であることを今一度肝に銘じてください。

AERA 2018年1月22日号