ぐっちーさん/1960年東京生まれ。モルガン・スタンレーなどを経て、投資会社でM&Aなどを手がける。本連載を加筆・再構成した『ぐっちーさんの政府も日銀も知らない経済復活の条件』が発売中ぐっちーさん/1960年東京生まれ。モルガン・スタンレーなどを経て、投資会社でM&Aなどを手がける。本連載を加筆・再構成した『ぐっちーさんの政府も日銀も知らない経済復活の条件』が発売中
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 経済専門家のぐっちーさんが「AERA」で連載する「ここだけの話」をお届けします。モルガン・スタンレーなどを経て、現在は投資会社でM&Aなどを手がけるぐっちーさんが、日々の経済ニュースを鋭く分析します。

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 今年も一年を締めくくる原稿となりました。そこで経済コラムとして2017年の一番の出来事は何かというお話で最後にします。ずばり、「脱炭素への道」からは戻れないことがはっきりした年と申し上げていいでしょう。

 AERAの連載を遡ってみると、私は東日本大震災のあった11年にはすでにアメリカで動き始めていた脱炭素がこれからの経済活動のキーワードとなると書いています。実はいまだに脱炭素と言うと何ですかそれ?と言う大手企業の幹部が日本には多数いるのが現実です。しかし、脱炭素に真面目に取り組んでいない企業は、資本や消費、人材などあらゆる分野で取り残され、「環境テロリスト」と呼ばれるようになるでしょう。

 11年の東日本大震災による福島原発の大事故を見て、ドイツは原子力発電の停止に動きました。アメリカ、中国でさえも原発は危ないと考えはじめ、自然エネルギーに切り替えつつあります。その時に日本は、原発を止める代わりに石炭火力発電に大きく舵を切って、燃焼効率のよい日本のガスタービンを使えば30%もエネルギー効率を上げることができる!と、今でも経済産業省のバックアップで世界中にガスタービン発電機を売ろうとしています。

 これが世界の笑いものになっているわけです。そんなことやっている場合じゃない、どうやったら「脱炭素」を達成できるのか本気で考えろ、と今回の国連気候変動枠組み条約締約国会議(COP23)では、日本はけちょんけちょんに叩かれました。世界中で石炭を燃やすことはやめよう(中国でさえ5年で800基も予定していた石炭火力発電の増設はストップしている)としている時に、日本が輸出促進しようとしているのは馬鹿だと名指しで非難。脱炭素における「周回遅れのランナー」と呼ばれました。

 COP23が始まる前は、多くの日本の大企業の幹部が「環境問題で進んでいる日本の技術を活用してもらえば世界に貢献できる」などと言っていましたが、これこそ時代錯誤。世界の評価は「日本は技術力があるのになぜ脱炭素にその技術を活用しようとしないのか」です。日本はいまだに重電機を売りまくる悪の商人……でありまして、核拡散に走る北朝鮮と「2大悪」と呼ばれる日もそう遠くないかもしれませんね。

※AERA 2018年1月1-8日合併号