北朝鮮メディアは「ついに国家核戦力が完成した」との金正恩(キムジョンウン)朝鮮労働党委員長の言葉を伝えた。米国のパシフィックフォーラムCSIS(戦略国際問題研究所)のコッサ所長は29日付の論考で警鐘を鳴らした。

「平壌は『米本土をたたけるようになった。凍結へ対話してもいい』と言ってきそうだ。トランプ政権は『勝利』を急いで罠に陥らないだろうか。検証可能な核・ミサイル開発の凍結なら非核化への慎重な一歩となるが、実験を凍結するだけなら北朝鮮の現状を認めることになる」

 日本には届く中距離弾道ミサイル・ノドンなどの対応が後回しになる懸念もある。27日の国会ではその点を突く質問が自民党から出た。安倍首相は「ノドンは在日米軍にも直接の脅威だ。日米間で方針は完全に一致している」と不安の払拭(ふっしょく)に努めた。

 安保理決議による制裁は効いているのかという問題もある。実施を監視する専門家らは8月の報告書で、「制裁の範囲が広がるほど回避も広がる」と述べ、禁輸品偽装や、ダミー会社による金融制裁逃れが続いていると指摘。北朝鮮の主要産品の石炭について中国が決議に沿い2月に輸入を止めると、アジアの他国で輸入が増えたことや、武器輸出や公共事業受注によるアフリカでの外貨獲得にも触れ、「非核化へはほど遠い」とした。

 今回の発射を受けた29日の安保理緊急会合で日米は圧力強化で足並みをそろえたが、中ロは対話を主張。日本外務省幹部は「国際社会が一枚岩になれるか。北朝鮮と我慢比べだ」と話す。12月上旬に朝鮮半島で米韓合同の航空軍事演習も控え、北朝鮮の出方は予断を許さない。(朝日新聞専門記者・藤田直央)

AERA 2017年12月11日号より抜粋